AS IT IS
Driverless Cars to Carry Uber Passengers in Pittsburgh
August 24, 2016
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多くの人にとって、運転手不要の車に乗る事はいまだに夢に過ぎない。しかしこの夢は今、アメリカ・ペンシルバニア州の人々にとって現実となりつつある。

ライドシェア事業のウーバーは、数週間以内に自動運転車の稼働を始め、ピッツバーグ市周辺で乗客の輸送を行う。

多くの企業、例えばグーグル、アップル、それに合衆国の大手自動車メーカーが現在、無人車両の試験を行っている。しかし、アメリカ市民が実際に利用するのは初めてのことだ。

ウーバーの試験車両は乗車無料

乗車サービスは、フォードのフュージョンという車種に自動運転の技術を搭載したもので開始される。ウーバーの利用者はスマートフォンを利用して配車を依頼する。ピッツバーグでシステムを試験している期間中、自動運転車両の乗車は無料になる。各車両には安全対策上、前部座席に運転手が乗っており、必要があれば車両の運転を行う

非営利組織・ランド研究所の情報学者、ニディー・カルラは、ウーバーの運転手不要事業は技術開発にとって重要になると話している。またこれは、多くの人にとって自動運転車を経験する初めての機会となる。

「この技術がどう見え、どう感じられるかを間近で確認できることは、アメリカ市民にとってワクワクすることです。技術的な観点で言えば、ウーバーが今手にしようとしている優位さは、彼らが開発中の自律的な自動車技術と利用者がどのように相互に影響するのか把握できることだと私は思います」

ウーバーの最高経営責任者であるトラビス・カラニックは、このプロジェクトは重要な前進だと述べている。しかし、自律運転車両の開発には多くの課題があるとも付け加えている。

「我々は急速に追い付いています。しかし、早くNo. 1 を獲得する必要があります」と彼はAP通信社に対し話している。「我々はレーザー光線並みに集中して、これを市場に到達させる必要があります。なぜならこれは我々にとって副業ではないから、これが全てだからです」
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ウーバーとボルボの提携

ウーバーはまた、自動車メーカー・ボルボと自動運転技術や車両の供給について提携し、3億ドルの投資を行うと発表した。将来はボルボの車がピッツバーグの運転手不要車両の一部を構成する。

カルラは、今後数年すれば他の都市でも運転手不要車がカーシェアリング事業で使われるようになるだろうと考えている。

「2020年までには、この国のどこかで、もしかするとこの国のあちらこちらで、一般利用者がA地点からB地点まで移動するのに自律運転車両を呼ぶことができると期待しています」

しかし、と彼女は述べている。ウーバーや、その主な競合相手であるリフトのような企業は、事業を展開する前に様々な問題を検討しなければならない。そうした問題には、自動運転技術への法規制、人口、気候や地勢つまりその土地の形状や状況などがある。
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利用者について言えば、人々は自律運転技術をあっという間に受け入れそうだとカルラは述べている。

「この技術の安全性が実証され、人ならこう運転すると人々が期待する通りに運転されるならば、人々はたちまち慣れるだろうと私は思います。なぜなら自動運転は非常に多くの他の利便性を生み出すからです」

合衆国の大手自動車メーカーは、人々が早急にこの技術を受け入れることを期待している。

自動運転車は自動車販売の在り方に影響する

フォードは最近、完全な運転手不要車両を2021年までに公道に走らせる計画を発表した。ハンドルもアクセルやブレーキのペダルもない車を、最初はウーバーやリフトといったカーシェアリング事業者に販売し、その後一般向けにも販売する。

カルラは、自動運転車両がますます発展してライドシェア事業がもっと人気を得れば、未来の多くの人たちは、車を所有する欲求や必要がなくなるということを意味すると考えている。

「従って、別の動きも生じます。このことが示唆するのは、デトロイトの自動車メーカーは多少異なるビジネスモデルを考えています。そこではメーカーは人に車を売るのではなく、人々があちこち動き回る能力を販売しているのです。そしてこれは、アメリカの交通体系において全く新しい移動性の考え方なのです」

ブライアン・リンでした。

[ノート]
Uber:ウーバーとは、アメリカ合衆国の企業であるウーバー・テクノロジーズが運営する、自動車配車ウェブサイトおよび配車アプリである。Uberは2009年3月にトラビス・カラニックとギャレット・キャンプにより設立。2015年の予約売上は108億4000万ドル(約1兆3000億円)と推定されている。(wikipediaより)
in a few weeks:数週間のうちに・数週間で
Pittsburgh:ピッツバーグは、アメリカ合衆国ペンシルベニア州南西部に位置する都市。かつては鉄鋼生産の中心地として栄えた。(wikipediaより)
Free ride:無料乗車・タダ乗り
tester:試験者・試験装置
start out with:~から始める
Ford Fusion:フォード・モーターによって製造される中型セダン 主にヨーロッパ地域で販売するスーパーミニ(小型車)と同名だが、これは別の車。
equipped with:~を装備している・~を搭載している・~を身につけている
safety measure:安全対策
take control of:~を制御する・~の主導権を握る・~を掌握する
information scientist:情報学者
not-for-profit:非営利の
RAND Corporation:ランド研究所は、アメリカ合衆国のシンクタンク。1946年にアメリカ陸軍航空軍が、軍の戦略立案と研究を目的とした ランド計画Project RANDとして設立したのが始まりである。「アメリカ合衆国の公益と安全のために、科学、教育、慈善の促進を目的として」設立された非営利組織。(wikipediaより)
see up close:間近で見る
technical perspective:技術的観点・技術的な見地
advantage:好都合な点・利益・長所・優位
interact with:接触する・触れあう・関わる・交流する・相互に作用する・情報をやりとりする・交わる
autonomous:自主的な・自立した・自律した
vehicle technology:自動車技術
Chief Executive Officer:最高経営責任者
step forward:前に進む・進歩
lot of work:かなりの作業・多くの仕事・問題が山ほどある
need a lot of work:いろいろ手直しが必要である・不備が多い
catching up:追い付く・挽回する
Associated Press:AP通信社は、世界的な通信網を持つアメリカ合衆国の大手通信社。米国内の放送局や新聞社の協同組合であり、各社はAP通信を通して記事を配信すると同時にAP通信から記事の配信を受ける。(wikipediaより)
laser focus:レーザー焦点 focused laser:光学集束レーザー focus like a laser beam:レーザー光線のように集中する
side project:課外活動・本業とは別の副業
team up with:~とチームを組む・~と提携する
announce:発表する・告知する
deal with:取り組む・対応する・取引する
Volvo:ボルボはスウェーデンを本拠とする企業グループである。ボルボ・トラックス、ルノートラック、マック・トラックス、UDトラックス、ボルボ・バス、ボルボ建設機械、ボルボ・ペンタ、ボルボ・エアロ、ボルボ金融サービスの9部門を擁し、トラックから軍用ジェットエンジンまでを網羅するコングロマリットである。社名の「ボルボ」はラテン語で「私は回る」を意味する。(wikipediaより)
fleet:艦隊・船団・航空隊・自動車隊・車両
in the coming years:今後何年間も・今後何年かして・この先何年かで
multiple place:多数の・多様な・複合の
competitor:競争相手・ライバル関係にある企業や個人・競技参加者
Lyft:リフトとは、米国サンフランシスコで2012年に開始されたライドシェア型のオンライン配車サービスである。
expand:拡大する・展開する・広げる
law regulating ~:~を規制する法律
terrain:地域・地帯・地形・地勢
As for:~に関しては・~はどうかと言えば・~の場合は
be likely to:~しそうである
demonstrably:実証できるように・論証によって・はっきりと・確実に
behave:振る舞う・行動する・機械が動く・機能する・効果が作用する
get comfortable:慣れる・安心する・くつろぐ
embrace:抱擁する・取り巻く・包含する・採用する・進んで活用する・受け入れる
suggest:提案する・勧める・意味する・示唆する
Detroit:デトロイトは、アメリカ合衆国ミシガン州南東部にある都市。南北をエリー湖とヒューロン湖に挟まれており、東はカナダのウィンザー市に接する。主要産業は自動車産業(wikipediaより)
look at:見る・調べる・検討する・考える・逆境に直面する
get around:あちこち移動する・動きまわる
mobility:動きやすさ・可動性・移動性

関連する日本語の記事を紹介します。
今月ですよ、今月。ビックリの早さです。
Uberが自動運転車の開発をしていることは前から報道されてきましたが、これほどのスピードで進んでいるとは驚きです。
レポートによるとUberの最終目標は、現在何百万人も存在しているUberのドライバーたちを自動運転車によって全て置き換えてしまうことだそうです。いやー...スケールがでかくてなんとも想像しづらいですが、別に口先だけでなく、日本も含めて多くの国が目指している方向ではあるんですよね。

もう一件、日経新聞から「ボルボ、米ウーバーと自動運転車開発 300億円投資(2016/8/19)」 記事の一部を引用すると、
ボルボが多目的スポーツ車(SUV)の「XC90」など旗艦3車種をベースとして提供し、ウーバーが独自開発したシステムを組み込む。投資額はほぼ折半の見通しで、車の周囲の状況を検知するセンサーやソフトウエアなども開発する。
ウーバーは5月にトヨタ自動車からの出資受け入れを含む戦略提携を発表した。今回のボルボとの提携では具体的に無人ライドシェアの用途開発まで踏み込んだ。
一方、ボルボは来年から本社のあるスウェーデン西部イエーテボリの公道で、自動運転車100台の実証プロジェクトを始める予定。IT(情報技術)の蓄積が豊富なウーバーと組み、自動車他社との競争に挑む。

その頃、日本は何をしているのでしょう?
国土交通省が、自動運転の国際基準作りに乗り出すことが28日、分かった。
(中略)
国交省は、日本の技術を背景とする国際基準を世界の標準にすることで、国際競争力を高めたい考えだ。
(中略)
国交省は、日本自動車工業会などと連携して基準の「日本案」を策定し、国連の議論を主導したい考え。17年度予算の概算要求で、自動運転の関連予算として3億4100万円を要求する。

国連の議論を主導? こういう国策的「日の丸技術」計画は過去に失敗事例が多数あります。ガラパゴス化して日本企業を弱体化するだけではないのかと不安になります。
更にもう一つ、もっと怖い話。Yahooニュースから自動車評論家・国沢光宏氏の記事です。「自動運転化に待ったを掛けている国交省。赤信号での自動ブレーキ認めず(2016年1月6日)」 記事の一部を引用します。
一時停止標識手前で減速しなかった場合、自動的にアクセルを戻したり弱いブレーキを掛けたり出来ないのだろうか? 関係者に話を聞くと「出来ます」。
(中略)
実際、赤信号を明確に判断できる性能持つメーカーが国交省に「赤信号で停止する機能を付けたい」と相談したところ「絶対ダメ」と受けてくれなかったという。なぜ絶大なる事故防止効果を持つ赤信号や一時停止標識での制御を認めないのか? 理由は簡単。国交省が『ITS』(高度道路交通システム)という巨額の投資を必要とするインフラとセットになったシステムを立ち上げたいからに他ならない。
具体的に説明すると、信号などに情報を発信する装置を取り付け、その電波をクルマが受け取り制御するというシステムだ。信号1カ所で2千万円規模の装置を付けるため、巨額の予算必要。天下りポストになる管理団体も作らなければならない。それと同じことをクルマだけで実現されたら困るのだろう。そもそも日本が先行していたのに今や欧米に抜かれた自動運転技術だって国交省の禁止命令により15年間進化しなかった。
繰り返すが、ドライバーの単純なミスによる悲惨な事故を防ぐための技術はいつでも出せる状況にある。進入禁止の標識だって容易に判断出来るので、高速道路の逆走も防ぐことは可能。これらの安全技術を全て禁止しているのは国交省なのだ。

役所は利権と予算が欲しいだけ。今や残り少ない世界で好調な日本の製造業の代表、自動車産業は国交省の利権に滅ぼされるかも。怖い怖い。