AS IT IS
What Is the Best Way to Teach English?
October 08, 2016

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合衆国政府の教育部門の高官は、英語が母語ではない生徒に対する教育で学校がより良い機能を発揮するよう求めている。

合衆国教育長官のジョン・キングは、この問題は重大だと述べている。それは、合衆国の幼稚園から12年生までの生徒たちの10人に一人は英語学習者だからだ。

英語学習者のほとんどは、異なる言語を話す国から来たか、両親が英語以外の言語を話す国出身かだ。

この問題では近年改善が見られるとキングは述べている。スペイン語を母語とする生徒の高校卒業率も大学進学率も、かつてない高率になっていると彼は指摘している。

「しかし全国各地のあまりに多くの場所で、英語学習者には不足があるのです。優れた教師に接する機会が不足し、高度な授業を受ける機会が不足し、彼らが成功するために必要な資源を利用する機会が不足しているのです」とキングは述べている。

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キングは、新たな連邦法、「全ての生徒が成功する法(the Every Student Succeeds Act)」と名付けられた法が有益だと述べている。この法は、各学区が英語学習者向けの教育課程を向上させるために、連邦予算をより多くの方法で利用することを認めるもので、そこには英語教師のためのより良い訓練も盛り込まれている。

ケリー・ゴネスは教育省の政策顧問だ。

研究によれば、二つの言語で授業をする、つまり英語とその生徒の母国語で教えることが英語学習者にとってより望ましいと示されていると彼女は述べている。

この方法では、生徒は英語の習得にはやや長い時間を要するものの、読解や数学の能力を測るテストではより良い成績をとるのだと、ゴネスは述べている。

So do people who enter dual-language programs already proficient in English, Gonez said.(訳出来ず) 'To be proficient'とは、ある言語を読んだり話すことができるという意味だ。

サラ・キャサリン=ムーアはワシントンD.C.にある応用言語学センターのオンライン学習部長だ。

彼女は、最近の二つの研究によって、英語学習者は英語とその生徒の母国語の両方を使う授業に参加すると成績が向上すると判明したと述べている。

しかしゴネスによれば、英語学習者が通っている学校の大多数では、そのようなカリキュラムはいまだ提供されていないという。

問題の一つは、十分に資格要件を満たす教師の確保だ。ゴネスによれば、ある学区ではスペインと中国出身の教師を雇用した。これは、合衆国において二つの言語での教育を提供できる教師の不足を補おうとするものだ。

しかしこのようなカリキュラムを開設するのは必ずしも容易ではない。

例えばニューヨーク市では、市の教育局によれば、市内の生徒は全部で180の異なる言語を話すという。

生徒のおよそ16%はスペイン語を話し、また14%は中国語を話す。

市内にはまた、6,546人のベンガル語を話す生徒と、6,501人のアラビア語を話す生徒、3,591人のハイチクレオール語を話す生徒がいて、更に数千人のロシア語、パンジャブ語を話す生徒もいる。

ゴネスは、生徒が話す様々な言語の全てで話ができる講師を見つけるのは困難かもしれないと話している。しかし彼女は、学校はより多くの言語についての教材は手に入れることができる、that just Spanish and Chinese.(訳出来ず)と述べている。

テリー・リチャードはデラウェア州で連邦制度の担当をしている。彼女は新たな連邦教育法を歓迎している。この法は、英語学習者にどう教えるかについて、州や地方自治体の教育部局がより多く決定することを認めるものだと彼女は述べている。

リチャードによればこの法は、地元の学区が英語教育計画を発展させるうえで「地元の」ニーズを考慮することを可能にするものだ。

ブルース・アルパートでした。

[ノート]

top official:高官・幹部
do a job:仕事をする・役目を果たす・功を奏する
do a better job:仕事をもっと上手にこなす
first language:母語・第一言語
Education Secretary:教育長官・教育省(Department of Education)の長官
John King:オバマ大統領は2016年2月11日、教育省(Department of Education)のアーン・ダンカン前長官(Arne Duncan)の退任後、2016年1月から長官代理を務めるジョン・キング氏(John B. King)を教育長官に指名する意向であることを発表した。(海外学術動向ポータルサイトより)
one in every 10:10人に一人
grade:(ここでは)学年
Kindergarten:幼稚園
12th grade:12年生・日本の高校3年生に相当
English learner:英語学習者
arrive:着く・到着する・届く
have parents from different countries:国籍の違う親を持つ
from:(ここでは)~の出身である
progress:前進・発展・進歩・向上・成長
recent years:近年
note:書き留める・気付く・注意する・言及する・指摘する
Spanish-speaking:スペイン語を話す
graduate:卒業する
attend college:大学に通う・大学に進学する
than ever before:かつてないほど・従来にも増して・これまでより
across the country:国中で・全国で
less:より少ない・より少数の・劣る
access to:利用する機会・入手する機会
quality:質の良い・上質の
advanced:進歩した・進んだ・上級の・高度な
coursework:カリキュラムに従った学習課題・授業・講義・セミナー
resource:援助・手助け・資金・供給源・資源・資産
federal law:連邦法
Every Student Succeeds Act: is a US law passed in December 2015 that governs the United States K-12 public education policy.(英語版wikipediaより)オバマ政権がNo Child Left Behind Actに代わる教育法として可決した新法
allow:許可する・与える・配分する・割り当てる
school district:学区・通学区域
federal money:連邦予算
improve:改善する・改良する・向上させる・強化する
program:(ここでは)課程・カリキュラム・学習計画
include:含む・盛り込む
Kelly Gonez:(資料見つからず)
policy adviser:政策顧問・政策アドバイザー
show:見せる・示す・指摘する・明らかにする・論証する
instruction:指示・命令・教育
give instruction:教える・教授する・指示する
native language:母語
master:習得する・使いこなす・征服する
do better on a test than:~よりもテストで高得点を取る
measure:測定する・評価する
reading:(ここでは)読解力
math:数学・計算
skill:技能・能力
dual-language:二言語
proficient:熟達した・堪能な・習熟した
So do people who enter dual-language programs already proficient in English, Gonez said.(訳は不明。'who'以下は「既に英語に習熟して二言語授業に参加する」だと思うが、'So do people' がわからない。)
Sarah Catherine Moore:Sarah Catherine K. Moore, PhD is Director of CAL’s Program Area covering online education and virtual learning(Center for Applied Linguisticsのウェブサイトより)
director:取締役・監督・所長
the Center for Applied Linguistics:is a private, nonprofit organization founded in 1959 and headquartered in Washington, DC. CAL’s mission is to promote language learning and cultural understanding by serving as a trusted source for research, resources, and policy analysis. (英語版wikipediaより)
Applied Linguistic:応用言語学
Washington D.C.:アメリカ合衆国の首都である。同国東海岸、メリーランド州とヴァージニア州に挟まれたポトマック川河畔に位置する。法律上の正式名称は「コロンビア特別区」(District of Columbia)である。(wikipediaより)
do better:向上する・成績が良くなる
attend:出席する・参加する・行く
offer:提供する・申し出る・提案する
majority:大多数・過半数・多数派
find:出会う・見つける・探しだす・辿り着く・手に入れる
qualified:資格要件を満たした・資格のある・能力のある・適任の
make up for:不足を補う・損失を埋め合わせる・遅れを取り戻す・清算する
shortage:不足・欠乏
set up:組み立てる・据え付ける・配置する・設ける・開設する・建設する・提供する
different:異なる・似ていない・様々な
Bengali:ベンガル語・ベンガル人
Arabic:アラビア語
Haitian-Creole:ハイチクレオール語・大部分のハイチ人によって話されるクレオール言語
Russian:ロシア語・ロシア人
Punjabi:パンジャブ語・パンジャブ人
instructor:講師・指導者
educational material:教材
that just Spanish and Chinese.:(訳は不明。文脈的には「スペイン語や中国語だけでなく」とか「~と同様に」だと文意がつながる気がするが、'just'はどう訳すのか?)
in charge of:~を担当している・~を任されている・~の責任者である
federal program:連邦制度
Delaware:デラウェア州は、アメリカ合衆国大西洋岸中部に位置する州の1つである。ロードアイランド州に次いで2番目に面積が小さく、独自の会社法と裁判制度により法人の設立に最適な州として知られ、米国上場企業の50%が設立準拠地ないし本社を置く。(wikipediaより)
local:地方の・地元の
permit:許可する・認める・同意する・可能にする
consider:考える・検討する・考慮する

オバマ政権が成立させた新たな連邦教育法が「Every Student Succeeds Act(全ての生徒が成功する法)」。その前、2002年にブッシュ政権下で施行された連邦教育法が「No Child Left Behind Act(子どもを一人も落ちこぼれにしない法)」。ネーミングがアメリカ的でちょっと笑えます。
ブッシュのNCLB法については、“科学的な根拠”という意味をもつ「エビデンス・ベースト」(evidence based)という考え方が積極的に導入された法として知られます。DIAMON ONLINEから「“思い込み”の政策が「ゆとり世代」のような不平等をつくり出す 2015年2月19日」。「統計学が最強の学問である」の著者・西内啓氏と、「『学力』の経済学」の著者・中室牧子氏の対談の一部を引用します。
西内:文化や歴史の違いもあるかもしれませんね。アメリカは歴史的に読み書きの習熟率が低く、その向上が国としての大事な政策課題です。ブッシュ政権が2002年に署名をした「落ちこぼれ防止法(No Child Left Behind)」から教育分野の研究も大きく変わってきた、という印象を持っています。
中室:まさにおっしゃるとおりです。「落ちこぼれ防止法」が施行されたときに、この法律の中で、実に111回も用いられている言葉が「科学的な調査研究(scientifically based research)」です。2002年に施行された「教育科学改革法(Education Research Reform Act)」において、自治体や学校が連邦政府から予算を得るためには、エビデンスに基づく評価が要請されたことにより、エビデンスベーストの教育政策が定着したといわれています。
 アメリカらしいのが、教育省は「落ちこぼれ防止法」の中で、「エビデンスとはランダム化比較試験に基づくもの」であると明言しており、「エビデンス=ランダム化比較試験」という図式が成り立っているといっても過言ではありません。日本のように、省益に照らして、都合のよいデータをプレゼンテーションするのは「エビデンス」だと認識されないということです。
エビデンス=ランダム化比較試験の具体例として、少人数クラスの話が出ます。
中室:この実験では、79の公立幼稚園・小学校を、1学級あたりの生徒数が13~17人の少人数学級となる学校と、1学級あたりの生徒数が22~25人の学級となる学校にランダムに振り分け、少人数学級が学力を上昇させる効果をもつかを検証しようとしました。事後的に13~17人の少人数学級が割り当てられた子どもらと、22~25人の通常学級が割り当てられた子どもらを比較すると、13~17人の少人数学級は学力が高いことがわかりました。特に幼稚園から小学校低学年の低年齢の子どもらと黒人の子どもらに対する効果が大きかったのです。
西内:少人数学級は効果あり、という結果が出たのですね。
VOAの記事でも、研究によって二言語授業に効果があると分かったから導入する、と言う話が出てきます。日本の教育政策議論には、こうした統計的裏付けがはなはだ不足していると感じます。
さて、NCLB法がESS法に変わって、何が変化したのでしょうか?
NCLB法成立の2002年以降、全米共通学力基準であるコモン・コア(CCSS)やその到達度を測る統一テストが導入され、統一テストの結果が学校と教員の評価、連邦政府からの財政支援に結びつけられるようになるにつれ、NCLB法の画一的な方法の限界が露呈し、多くの反対運動を引き起こすまでになっていた。
 今回の改訂で、オバマ大統領は、「高い基準、アカウンタビリティ、学力格差縮小」というNCLB法の核となる目標は間違っていなかったことを確認したが、ESSAにより、統一テストの実施方法やカリキュラムなどにより柔軟性を持たせ、州と学区、教師たちに決定権を再び戻すことになった。
とあります。もう少し詳しく、国立国会図書館調査及び立法考査局の「【アメリカ】初等中等教育に関する新法の成立 2016.2」(pdf注意)によると、NCLB法の問題点が、
州等が取り組むよう要求される施策に対し付与される連邦補助金は、各州が必要と認める額に不足していること、同法で義務付けられる学力テストの方法、学力の判定基準等が硬直的であること、2013-14 年度までに全児童・生徒を到達させるよう各州に義務付けられた学力レベルが、現実的に到達困難な目標であること等、NCLB 法に対しては、州や地方の教育関係者等からの反発が強かった。
とし、新たなESS法は
州による学力テストの実施義務と学力の低い学校への改善の義務付けについては継続する一方、学力テストが準拠する学力レベルやその評価方法の制定は州の自由裁量とし、学力の低い学校の改善計画に連邦の介入を認めないことで妥協が成立した。
とあります。ふむ。
ESS法の目玉の一つは、コンピュータサイエンスの重視だと、WALL STREET JOURNAL日本版の記事にあります。「米国でコンピューター科学が小学校の科目に? 2015年12月11日」
記事の一部を引用すると、
米国の教育制度に関わる超党派の法案が10日、オバマ米大統領による署名を経て法律として成立した。これはテクノロジー業界にとって朗報だ。コンピューターサイエンスが算数・数学や英語(国語)と同じくらい重要な科目として位置づけられたためだ。
(中略)
 初等および中等の教育制度を扱うこの新たな「Every Student Succeeds Act(児童生徒が全員成功する教育法)」が定める包括的な科目構成の定義にコンピューターサイエンスが含まれた。州や地域の行政当局にしてみれば、他の科目と同様に連邦予算が振り分けられる対象になったということだ。
だそうです。