AS IT IS
China’s Planned 'Silk Road' Reaches London
January 25, 2017

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VOAの動画はこちら

史上初の、中国発英国行き直通の貨物列車が先週、ロンドンに到着した。

これは、中国が「シルクロード」の交易路を再開発しようと取り組んでいる最新の証拠だ。それはかつてアジアからヨーロッパまで伸びていた。

列車は、18日間、28,000キロの旅の末にロンドンに到着した。中国を出発してから、カザフスタン、ロシア、ベラルーシ、ポーランド、ドイツ、ベルギー、そしてフランスを経由し、更に英仏海峡の地下を横断したのだ。68個のコンテナの中には、日用品、衣料品、布地、かばん、それにスーツケースが積まれていた。

フィリッパ・エドマンズは英国の輸送向上キャンペーンに従事している。

「これは海路よりも二倍速いので、そこで重要な役割を果たします。また、お話ししたように、航空便に比べると遥かにずっと汚染が少なく低コストです。つまり、空輸に比べると汚染は20分の1です」

しかし、運んできた貨物よりも列車それ自体の方が重要かもしれない。観測筋によれば、この輸送には政治的なメッセージがある。つまり、中国は新たな交易路を、そして新たな市場を開拓しているのだ。中国からの貨物列車は、すでに欧州15都市に商品を届けている。

中国は、自分たちが製造した商品を販売する、更なる販売先を獲得する必要がある。それが、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのジア・ユーの見解だ。

「中国の国内市場は現在、非常に停滞しているようです。そこで中国は懸命に新たな市場を、そして過剰な生産能力の吸収を可能にすることを探しています。そして間違いなく、この貨物列車は中国の製造業にとってとても優れた運搬手段として機能し、中国国内の景況感の回復に役立つかもしれません。

ジア・ユーは、中国の指導者は世界での影響力を高めるために貿易を利用できると確信していると述べている。

「歴史は新たな時代を開きました。中国は国際舞台でより多くの責任を担う意欲を更にいっそう示し、また、ある種の責任ある指導者になろうと努めています」

中国の鉄道がロンドンに到着した頃、もう一つの歴史的な訪問が行われていた。習 近平はスイスで開催される世界経済フォーラムに出席した初の中国国家主席となった。会合において、彼はグローバリゼーションと自由貿易の重要性について語った。

中国政府は、ドナルド・トランプが合衆国の大統領になった後で自由貿易とグローバリゼーションを支持する強力な声明を発表している。トランプは、中国の貿易政策がアメリカ経済を損なってきたと発言している。ある専門家は、習の発言は、中国の政策に対する新大統領の非難への反論だと見ている。

クリストファー・ジョーンズクルーズでした。

[ノート]
Plan:計画する・立案する・予定を立てる・もくろむ・構想を考える

first-ever:史上初の・初めての
direct:まっすぐな・直接の・率直な・直々の
freight:積荷・貨物・輸送
latest:最新の・最近の・最後の
evidence:証拠・痕跡
effort:努力・尽力・取り組み・成果
redevelop:再開発する
Silk Road:シルクロード・絹の道
trade route:交易路・通商路・貿易ルート
once:一度・あるとき・かつて・以前
stretch from to:~から~まで広がる・~から~に及ぶ
trip:旅・遠出・訪問
travel:旅する・周遊する・巡回する・進む・伝わる
Kazakhstan:カザフスタン共和国、通称カザフスタンは、中央アジアとヨーロッパにまたがる共和制国家である。首都はアスタナ、最大都市はアルマトイ。ロシア連邦、中華人民共和国、キルギス、ウズベキスタン、トルクメニスタンと国境を接し、カスピ海、アラル海に面している。(wikipediaより)
Belarus:ベラルーシ共和国、通称ベラルーシは、東ヨーロッパに位置する共和制国家。東にロシア、南にウクライナ、西にポーランド、北西にリトアニア、ラトビアと国境を接する、世界最北の内陸国である。首都はミンスク。ソビエト連邦から独立した。(wikipediaより)
Poland:ポーランド共和国、通称ポーランドは、中央ヨーロッパに位置する共和制国家。欧州連合 (EU) 、北大西洋条約機構 (NATO) の加盟国。通貨はズウォティ。首都はワルシャワ。(wikipediaより)
cross:(ここでは)横断する・渡る
English Channel:英仏海峡・イギリス海峡
container:コンテナ・容器・入れ物
household good:家財道具・家庭用品・日用品
clothing:衣類・衣料品
cloth:布・生地・織物
bag:袋・バッグ・カバン
suitcase:スーツケース
Philippa Edmunds:Freight on Rail Manager, Campaign for Better Transport and Vice President Transport & Environment Brussels(LinkedInより)
work at:~の仕事をする・~で働く・~に勤務する
Campaign:キャンペーン・組織的運動・遊説
better:より良い・さらに望ましい・優れた
Transport:運送・運搬・運輸・輸送
Campaign for Better Transport:ホームページはこちら
get a role:役目をもらう・任務を得る
as I said:私が言ったように
clean:(ここでは)汚染を出さない・排出物が少ない
cheap:安価な・安い・ちゃちな
air freight:空輸・航空便
I mean:いやその・というか・つまり
__ times less than:_分の1である
pollution:汚染・公害・汚れ
goods:商品・品物・貨物・財産
Observer:観察者・監視員・立会人・観測筋
develop:成長させる・発展させる・開発する・開拓する・進展させる
bring:持ってくる・連れて行く・もたらす・届ける
find:出会う・見つける・探しだす・発見する・気付く・理解する・獲得する・満たす
place:場所・地域・土地・流通経路・販売チャネル
belief:信じること・信念・考え・意見・信頼
Jie Yu:Dr Yu Jie (Cherry) is  China Foresight Project Manager and  Dahrendorf Senior Research Associate at LSE IDEAS. (LSEのサイトより)
the London School of Economics:ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス は、ロンドン中心部オールドウィッチにキャンパスを構える、英国で唯一の社会科学に特化した、ロンドン大学を構成する研究・教育機関である。(wikipediaより)
domestic:家庭内の・自国の・国内の
seem:~のように見える・~と思われる・~のようだ・~らしい
stagnate:成長が止まる・沈滞する・活気が無い・淀む
desperately:必死で・心底・是が非でも・懸命に
look for:探す・予期する・期待する
absorb:吸収する・吸い上げる・緩和する・和らげる・使い尽くす
excessive:過度の・行き過ぎた・法外な・必要以上の
amount:量・総計・総量
production capacity:生産能力・生産設備・生産規模
obviously:明らかに・間違いなく・どう考えても・目立って・言うまでもなく
serve as:機能を果たす・役割を果たす・役立つ、~を成す
vehicle:乗り物・車・車両
manufacturer:製造会社・製造業者・メーカー
help:助ける・手助けする・手伝う・支援する・救う・役立つ・一役買う・促進する
restore:元に戻す・修復する・復元する・回復させる
business confidence:景況感・企業信頼感・業況判断
believe:信じる・確信する・考える
gain:得る・獲得する・勝ち取る・稼ぐ・増加させる・上昇する
influence:影響・影響力・支配力・威光
gain more influence:影響力を増す
era:時代・年代・時期
show:見せる・飾る・連れて行く・示す・表す・指摘する・明らかにする
willingness:意欲・積極的に~すること・いとわないこと・乗り気であること・やる気
much more:(訳に自信なし。show much moreだと解釈したが、どうかな)
shoulder:引き受ける・担う・背負う・肩で押しのける
responsibility:責任・責務・義務・義理
global stage:国際舞台
try to:~しようとする・努める・試みる
a kind of:ある種の・一種の・~のような・少し
responsible:責任ある・信頼できる・重要な・責任の重い
leadership:指揮・統率・リーダーシップ・指導力・指導者の地位・指導者
take place:行われる・催される・起こる
例文as a child:子どもの頃
Xi Jinping:習 近平(しゅう きんぺい)は、中華人民共和国の政治家。2013年より第7代中華人民共和国主席、第4代中華人民共和国中央軍事委員会主席を務め、中華人民共和国の最高指導者の地位にある。(wikipediaより)
Chinese president:中国国家主席
attend:出席する・参加する・世話する・随行する
the World Economic Forum:世界経済フォーラムは、ビジネス、政治、アカデミアや、その他の社会におけるリーダーたちが連携することにより、世界・地域・産業のアジェンダを形成し、世界情勢の改善に取り組む、独立した国際機関として、ジュネーブに本部を置きスイスの非営利財団の形態を有している。1971年にスイスの経済学者クラウス・シュワブにより設立された。スイスのダボスで開催される年次総会が特によく知られており、約2500名の選ばれた知識人やジャーナリスト、多国籍企業経営者や国際的な政治指導者などのトップリーダーが一堂に会し、健康や環境等を含めた世界が直面する重大な問題について議論する場となっている。(wikipediaより)
meeting:会議・打ち合わせ・ミーティング・出会い
globalization:グローバリゼーション・グローバル化・地球規模化
free trade:自由貿易
make a statement:声明を出す・陳述する・発表する
strong:力強い・強力な・強固な・有能な・激しい
in support of:~を支持して・擁護して・賛成して
in the days after:(訳に自信なし。習主席の発言は1月17日で選挙よりはだいぶ後、就任日よりは前だが)
参考in the first days after birth:生後数日間に
参考day after:その翌日
trade policy:貿易政策・通商政策
hurt:傷つける・損害を与える・困らせる・損なう
word:語・一言・発言・言葉
answer:答え・回答・返事・正解・対策・対処法・反論・応酬
criticism:批判・批評・反論・非難

鉄道シルクロードの話題は日本語でも報道されています。いくつか紹介すると、産経新聞から「中国からロンドンの1万2000キロ結ぶ貨物列車が運行 「一帯一路」の一環、両国間の直通貨物は初めて 2017.1.2」 これは出発時の共同伝の記事です。記事の一部を引用すると、
中国浙江省義烏と英ロンドンを結ぶ国際定期貨物列車の運行が1日、始まった。中国が掲げる現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の一環で、中国メディアによると、両国間の直通貨物列車は初めて。中国は欧州との経済関係強化のため、中央アジアを通じた鉄道物流の充実を図っている。
(中略)
運行会社の責任者によると、海上輸送に比べて輸送時間を1カ月近く短縮でき、コストは航空便の20%程度だという。浙江省は製造業が盛んで、義烏は日用雑貨の世界的な卸売市場としても知られる。(共同)
なるほど。もう一つ、今度はロンドン到着時の報道。AFP-BBから「中国から英まで1万2000キロ…貨物列車の第1便がロンドン到着 2017年01月19日」 エントリーのタイトル下の写真はAFP-BBからの引用です。記事の一部を引用すると、
【1月19日 AFP】中国沿海部の浙江(Zhejiang)省と英ロンドン(London)を結ぶ国際貨物列車の第1便が18日、ロンドンに到着した。中国が掲げる現代版シルクロード(Silk Road)構想「一帯一路」の一環として西欧との貿易関係の強化を図るもので、1万2000キロを18日間かけて走破した。
(中略)
中国から英国まで延びる国際鉄道輸送網は中国国営の鉄道運営企業、中国鉄路(China Railway)が構築した。空路より安価、海路より速いという触れ込みで、ロンドンは接続された都市として15番目。
まぁ、アピール点は同じです。「空路より安価、海路より速い」。しかし気になるのは輸送距離。どの報道も「1万2000キロ」。どうもVOAの2万8000キロは間違いらしい。しっかりしろVOA。
この取り組みについて、NEWSWEEK誌が論説を書いています。「ロンドン直通の「一帯一路」鉄道で中国が得るもの 2017年1月5日 ロビー・グレイマー」 一部を引用すると、
中国は鉄鋼、セメントなど基幹部門の多くで、生産能力の過剰にたたられ、健全な経済成長を維持するには、新市場の開発が急務となっている。
(中略)
狙いは経済的な利益だけではない。現代版シルクロード構想は、外交上の狙いも組み合わせたものだと、オランダ国際関係研究所のフランポール・ファンデルプッテンはみる。中国がヨーロッパとインド洋沿岸で進めるエネルギー開発、鉄道、港湾整備事業への投資は地政学的に大きな見返りをもたらす可能性があるというのだ。
(中略)
トランプは自由貿易協定を声高に批判。中国を悪玉に仕立てる対中強硬派のエコノミストや通商顧問でまわりを固めている。こうした動きに習政権は警戒感を募らせているはずだ。
(中略)
中国は既にドイツのハンブルク、イタリアのミラノ、スペインのマドリードなどヨーロッパの他の都市に向かう貨物列車を運行させている。義烏からロンドンに向かう列車は200のコンテナを運べるだけで、2万ものコンテナを輸送する巨大な貨物船に比べると輸送量はわずかだ。
(中略)
何より「一帯一路」構想の進展を印象づけるシンボル的な意味合いが大きい。
過剰生産能力の消化。地政学的見返り。トランプリスク対策。しかし、輸送規模は極めて小さい。ロンドンと直結したという「シンボル的価値」。ふむふむ。
VOA記事中にあった、習国家主席のグローバリズム擁護演説も、結構話題で報道されています。朝日新聞から「習氏「開放型の世界経済を」 ダボス会議で保護主義牽制 2017年1月18日」 記事の冒頭を引用すると、
政財界などの要人が集まる世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)が17日、スイスのダボスで始まり、中国の習近平(シーチンピン)・国家主席が開会演説をした。習氏は「我々は揺るぎなく開放型の世界経済を発展させないといけない」と明言し、貿易の保護主義を牽制(けんせい)した。
ダボス会議の場では聞き飽きたこの主張も、中国指導者の発言としては随分と国際的で壮大なビジョンだ。それもこれも、トランプ次期米大統領の登場によって米国が国際舞台に「穴」を開けたからこそ。米国が内向き姿勢を強めるなら、中国は気候変動から地域一帯の安全保障に至るまで、より大きな影響力を行使できるようになるかもしれない。
と評しています。なるほど。
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写真はREUTERから、握手の相手はスイスのロイトハルト大統領。
一方のトランプ大統領は、日経新聞から「入国制限で全米混乱 トランプ氏「安全のため」 2017/1/30」 記事の一部を引用すると、
トランプ米政権による難民や「テロ懸念国」を対象にした入国制限措置に抗議するデモが全米各地で拡大している。米国入国の一時拒否や米国便の搭乗を拒否された人は計280人強に上り、デモは全米30都市以上に広がっている。
(中略)
空港で拘束者が大量に出た事態を受け、各地の連邦裁判所で措置の効力を一部停止する判断が相次ぐ。29日までにニューヨーク地裁などで拘束者の強制送還を認めない決定を下した。ニューヨークやカリフォルニアなど15の州と首都ワシントン特別区の司法長官は29日、共同で大統領令が違憲だと非難する声明を発表。大統領令の無効を目指し、訴訟も辞さない構えで、司法が最終的に無効の判断を下せば、大統領令は取り消される。
穴をどんどん大きくしてますよ。