HEALTH & LIFESTYLE
More Americans Died From Drugs in 2016 Than Any Year Before
August 28, 2017

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From VOA Learning English, this is the Health & Lifestyle Report.

2016年に合衆国では6万人以上が薬物が原因で死亡している。これは記録がある限りで最多人数の薬物死であり、また前年比で最大の増加だ。年前半の統計からは、オピオイドやその他の麻薬による死者は、2017年も増え続る見込みであることが示されている。

薬物の過剰摂取は、今や50歳以下のアメリカ人の死亡原因第一位であるとの声明を、司法副長官のロッド・ローゼンシュタインは麻薬取締局(DEA)の関係者ととともに2017年6月の記者会見で発表した。

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ローゼンシュタインはこれを「薬物過剰摂取の恐ろしい急増」と呼んだ。彼はまた、薬物の乱用が合衆国全土で家族や地域社会を破壊していると付け加えた。

200万人以上のアメリカ人が、オピオイドに対する何らかの身体依存を抱えている。オピオイドは鎮痛剤の一種で、合法的に多くの人に処方されている。オピオイドは、人々が多すぎる量を摂取したり、長期間摂取すると依存性を生む。

新種の致死的な違法薬物

しかし、オピオイド危機には新たな、より一層危険な問題があり、それが現在非常に頻発している。それは、既に存在する薬物を元にした極めて強力で違法なタイプの薬物が製造・販売されていることで、そうした薬物の一つがフェンタニルだ。

フェンタニルは極めて強力で、ごく微量、わずか2、3粒でさえ、人を死に至らしめる。警察官や、薬物過剰摂取の被害者を助けようとして最初に対応する人たち自身が、しばしば薬物の影響を受ける。

DEAにはまだ、問題のこの点に関する統計がない。しかしながら当局者によれば、証拠品を取り扱ったり、過剰摂取の薬物患者を助けている最中に、初期対応に当たった人が体調を崩した事例は明らかに増えているという。

DEAの高官であるチャック・ローゼンバーグは、薬物過剰摂取の事案では緊急の対応に当たる者は細心の注意を払うよう警鐘を鳴らしている。彼は、対応者にマスクや手袋といった保護具を身に着けるよう勧告している。

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A lethal dose of fentanyl next to a penny. (DEA photo)

違法な薬物を発見するよう訓練された犬さえも危険にさらされている。訓練士は、犬と自分自身双方のために解毒剤の携行を開始している。しかし、こうした新型の合成麻薬は非常に強力な為、救助要員を救命するには、時として解毒剤の多量の服用が必要になる。

ローゼンバーグは、過剰摂取の現場における緊急対応チームに対するDEAとしてのアドバイスを、こう要約している。「もしそれが何か分からないなら、そこにはあなたを死に至らしめるものがあると想定してください」

欧州における危機の増大

オピオイド問題の極めて急速な増加は、ヨーロッパでも起きている。欧州薬物・薬物依存監視センターは2017年6月、ヘロインやモルヒネに類似した危険な合成麻薬が欧州連合内で健康への脅威を高めていると発表した。

センターの専門家はウェブサイトにこう記している。2015年にEUでは8,000人以上の人が過剰摂取により死亡している。EUにおける過剰摂取人数の増加はこれで3年連続だ。また同センターは、欧州の薬物関連死はこれよりずっと多い可能性があると警告している。そのためセンターは、報告の遅延と、「一部の国よる過少報告」を非難している。

これが、健康と生活スタイルに関する報告だ。

アンア・マテオがお送りしました。

[ノート]
More Americans Died From Drugs in 2016 Than Any Year Before:2016年、アメリカ人の薬物による死亡はこれまでのどの年よりも多い。(タイトル訳は少し改変)

drug:麻薬・薬物・医薬品
drug death:薬物死
yearly increase:(辞書的に見つからない)
参考year-on-year increase:前年同月比増加
参考annual increase:年次増加
in all of recorded history:記録に残っている限りでは
Early data:(訳に自信なし)
early:早期に・早く・初期の
例文during the early part of:~の前半に
data:資料・データ
例文employment data:雇用統計
suggest:提案する・勧める・意味する・示唆する・暗示する
opioid:オピオイド (Opioid) とは、ケシから採取されるアルカロイドや、そこから合成された化合物、また体内に存在する内因性の化合物を指し、鎮痛、陶酔作用があり、また薬剤の高用量の摂取では昏睡、呼吸抑制を引き起こす。このようなアルカロイド(オピエート)やその半合成化合物には、モルヒネ、ヘロイン、コデイン、オキシコドンなどが含まれ、また合成オピオイドにはフェンタニル、メサドン、ペチジンなどがある。これらは本来的な意味で麻薬(narcotic)である。オピオイドとは「オピウム(アヘン)類縁物質」という意味であり、これらが結合するオピオイド受容体に結合する物質(元来、生体内にもある)として命名された。(wikipediaより)
overdose:過剰摂取
leading cause:主要原因・原因の第一位
Deputy Attorney General:司法長官代理・司法副長官
Rod Rosenstein:Rod Jay Rosenstein (born January 13, 1965) is the Deputy Attorney General for the United States Department of Justice.(英語版wikipediaより)
make a statement:声明を出す・声明を発表する
news conference:記者会見
Drug Enforcement Agency (DEA):アメリカ麻薬取締局は、アメリカ合衆国司法省の法執行機関であり、1970年規制物質法の執行を職務とする連邦捜査機関である。1973年5月28日、時の大統領リチャード・ニクソンが設置法案に署名し創設された。(wikipediaより)
official:公務員・職員・当局者
horrifying:恐ろしい・ぞっとするような
surge:急上昇・急増・急騰・殺到・動揺・うねり
abuse:虐待・悪用・乱用・中毒・依存
wreck:壊す・破壊する・蝕む・損なう・ダメにする・台無しにする
throughout:あらゆる場所に・至る所で
some sort of:ある種の・何らかの
physical dependence:身体的依存・肉体的依存
painkiller:痛み止め・鎮痛薬・鎮痛剤
legally:合法的に・法律的に
prescribe:処方する・指示する・命じる
addictive:中毒性の・中毒を引き起こす・病み付きになる・依存性のある・常習的な
for a long period of time:長い間・長期間・長時間
happen often:多発する・頻発する
much more:なおさら・更に・一層
illegal:違法の・不法の・非合法な
killer:命取りになる・致死の
even more:更にいっそう
crisis:危機・難局
extremely:極めて・極度に・非常に
copy:複製する・倣う・真似る・手本にしてまねる・模範とする
exist:存在する・生きている・生存する
fentanyl:フェンタニル (Fentanyl) とは、主に麻酔や鎮痛、疼痛緩和の目的で利用される合成オピオイドである。フェンタニルの効果はモルヒネの100~200倍と言われ、パッチ剤は癌性疼痛の緩和に使われる。特に経口オピオイドが使えない患者に有用である。乱用薬物としても流通していて、通称はチャイナホワイト。その効果から「合成ヘロイン」「ヘロインのデザイナードラッグ」とも評される。(wikipediaより)
smallest amount:最少量
grain:粒子・粒・穀物
Police officer:警察官
first responder:第一応答者(警官、救急隊員、消防士、医療関係者など現場に最初に駆けつける人)
victim:被害者・被災者・犠牲者
例文cancer victim:がん患者
affect:作用する・影響を与える・侵す
case:場合・状況・事例・真相・問題・事件
become ill:病気になる・具合が悪くなる・健康を損なう
handle:操作する・扱う・つかむ・手で触る・持つ・担当する・対処する
evidence:証拠・証言・痕跡
Chuck Rosenberg:Charles Philip "Chuck" Rosenberg is the acting head of the Drug Enforcement Administration. He was appointed in May 2015 (英語版wikipediaより)
high-level official:高級官僚・高官 (高官というか、実際は長官ですね)
warn:警告する・注意する・警鐘を鳴らす
emergency responder:緊急時対応要員
take great care:最大限の注意をする・慎重を期する・細心の注意を払う
advise:助言する・勧告する・忠告する・アドバイスする
protective gear:防護服・防護衣・防護器具・安全装備
glove:手袋
at risk:危険性がある・危険にさらされている
handler:扱う人・調教師・飼育係・訓練士
antidote:解毒剤
synthetic:合成の・人工の
dose:薬を飲む・服用する
rescuer:救助者・救助隊員
sum up:合計する・要約する・まとめる・総括する
scene:場面・シーン・舞台・設定・現場・場所・光景
assume:仮定する・推測する・みなす・想定する
rise:起きる・上がる・昇る・増大する・増加する・上昇する
The European Monitoring Center for Drugs and Drug Addiction:欧州薬物・薬物依存監視センター(略称:EMCDDA)は、欧州連合の専門機関のひとつである。設立は1993年である。ポルトガル共和国リスボンに所在している。(wikipediaより)
report:報告する・報じる・報道する・説明する・公表する
heroin:ヘロイン(英: Heroin)はかつての商品名であり、アヘンに含まれるモルヒネから作られる麻薬のひとつを指す。一般名はジアモルヒネあるいは3,6-ジアセチルモルヒネ。1889年にドイツで(バイエル社より)商品名ヘロインで発売され、モルヒネに代わる依存のない万能薬のように国際的に宣伝され、アメリカでは1924年に常用者推定20万人とされた。1912年の万国阿片条約で規制され第一次世界大戦後に各国が条約に批准。ドイツで1921年、アメリカで1924年に医薬品の指定がなくなると、のちに非合法に流通するようになった。(wikipediaより)
morphine:モルヒネは、ベンジルイソキノリン型アルカロイドの一種で、チロシンから生合成されるオピオイド系の化合物である。ケシを原料とする、アヘンから抽出される。強力な鎮痛・鎮静作用があり、重要な医薬品である一方で強い依存性を持ち、麻薬に関する単一条約の管理下にある。世界各国で麻薬取り締まり法規の対象薬物とされ、扱いが厳しく管理されている。(wikipediaより)
grow:育てる・栽培する・成長する・拡大する
例文curb the growing threat of:~の脅威の高まりを抑える
health threat:健康への脅威・健康への被害
threat:脅迫・脅し・脅かすもの
the European Union:欧州連合(略称:EU)は、欧州連合条約により設立されたヨーロッパの地域統合体。欧州経済共同体設立を定めた欧州経済共同体設立発効時の6か国から、2013年7月のクロアチア加盟により28か国にまで増えている。(wikipediaより)
die from:~が原因で死亡する・~による死亡
in a row:一列に並んで・連続して・立て続けに
high:高い・高度の・激しい
例文high in salt:塩分が多い
For this:(訳に自信なし)
blame:非難する・責める・~のせいにする
delay:遅らせる・先延ばしにする
delayed:遅延の
under-:(ここでは)過少の
例文underestimate:過少見積もり

VOA記事途中2枚目の写真に、コインと麻薬が並べて写っています。1セント硬貨(通称penny)は、直径が19.05mmで日本の一円玉(直径20mm)よりも小さいのですが、その脇の、ほんの砂粒少々程度で「A lethal dose(致死量)」と書かれています。これは確かに記事にあるように、警官や救急隊員や医師が対応中に誤って吸い込みかねない恐ろしい話です。
アメリカにおけるオピオイド蔓延の話は、日本語でも記事が多数あります。いくつか紹介すると、MEDLEYというサイトから「薬物大国アメリカでは年間1,150万人がオピオイドを乱用している 2017.08.06」 記事の一部を引用すると、
アメリカ合衆国の薬物乱用・精神衛生管理庁などの研究班が、2015年に行われた全国調査のデータをもとに、国内でオピオイドの乱用をした人の数などを推計し、医学誌『Annals of Internal Medicine』に報告しました。
(中略)
軍人や施設に入っている人を除くアメリカの市民の成人のうちで、2015年のうちに処方薬のオピオイドを使用した人は全体の37.8%にあたる9,180万人と推計されました。この中には乱用も含まれますが、適切に処方された人も含まれます。そのうち1,150万人がオピオイドを乱用していると見られました。薬物使用障害にあたる人は190万人と見積もられました。
一年間に9,000万人。成人人口の3人に1人以上が麻薬級の鎮痛剤を処方されていることになります。ちょっと信じがたい数字です。
ロイターから「コラム:米国経済を蝕む「オピオイド中毒」 2017年8月26日」 記事の一部を引用すると、
アメリカ疾病予防管理センターの調査によれば、鎮痛剤乱用による2013年の経済損失は785億ドル(8兆6043億円)に上った。医療費と薬物中毒の治療費は280億ドルに達し、そのほとんどが保険で支払われた。捜査・裁判費用は約80億ドルだった。その他の損失は、ほぼすべてが生産性低下と、若年死によるものだ。
現在の数字はさらに高いだろう。
オピオイド中毒の問題がアメリカ社会で深刻化するにつれ、雇用主が抱える人材難の問題も拡大している。イエレン議長は先週の上院公聴会で、この問題について時間を割いた。オピオイド中毒が雇用の妨げになっていると報告した地区連銀も複数ある。
FRBが通常なら管轄外の薬物中毒問題を気にする理由は2つ。一つは、働き盛り世代の労働参加率が歴史的に低い現状を理解する上で重要だということ。もう一つは、この数年にコミュニティーと労働力動向への関心を高めているFRBとしては、オピオイド危機は全米の人的リソースを損なう悲痛な現実であるということだ。
完全に管轄違いのFRBさえもが、オピオイド中毒が「働き盛り世代で労働参加率が低下していることと関係があると考えている」と発言する事態です。
他方、日本には別の問題があります。
塩野義製薬が提供している「がんのつらさ」というサイトのグラフを引用します。
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WHOによる医療用麻薬の適正使用量と実際の使用量の比較です。米独が、適正量の倍前後使用している「過剰使用」なのに対し、日本は適正量のわずか15%程度しか使っていない「過少使用」です。これは、患者の苦痛を取り除く治療が不十分だということを意味します。
「市民のためのがん治療の会」というサイトでも、日本の医療用麻薬の使用量が非常に少ないと書かれています。「がん患者の疼痛管理を考える 『トヨタ役員逮捕「オキシコドン」報道に対する米国での反応』 20150730」 各国の使用量を引用すると、オキシコドンの使用量が、
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次いで、モルヒネの使用量が、
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これについて「いずれにしろ、日本は欧米の先進国に比べて医療用麻薬の使用が、極端に少ないのです。これは逆に言えば、日本は疼痛管理の面で法的にも医療制度としても非常に遅れていると言えるのです。」と同サイトは書いています。
我慢することや耐えることを美徳とする国民性が原因でしょうか? 改善すべき課題だと思います。