AS IT IS
Ethiopian Olympian Living in Exile in US to Return Home
August 20, 2018

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2016年のオリンピック大会で男子マラソン競技の銀メダルを獲得した後、エチオピア人のフェイサ・リレサは合衆国に向かい、この二年間、そこで亡命生活を送っていた。今、彼は故郷に戻ることを決めた。

フェイサがエチオピアに戻ることを決めたのは、彼が到着した際には英雄として迎えられるだろうと二つの競技団体が彼に伝えたためだ。

エチオピア・オリンピック委員会会長のアシェビル・ウルダギオルギスはVOAに対し、フェイサ帰国の呼び掛けには、国をより良くする意図があるのだと語っている。

「彼は模範となるやり方を他の選手に教え、そして若者たちに強さを教えることができます」とアシェビルは述べている。

抗議の象徴

フェイサはリオデジャネイロ大会で世界的にニュースに取り上げられた。それは、ゴールした後で、頭上で両腕を交差させたためだ。この動作は、エチオピアで反政府抗議活動をしている人たちへの支持を示すものだった。フェイサは2016年夏季大会で銀メダルを授与された時にも、同じポーズをした。

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この当時、エチオピアは非常事態を宣言する方向に向かっており、暴力的なデモがエチオピアのオロミア地区全土に広がっていた。オロモ族の人たちは弾圧を始めとする人権侵害に抗議していた。

大会の後、エチオピアの当時の情報大臣ゲタチョウ・ルダはフェイサに祝辞を述べ、またこの選手に対し、帰国することは安全だと保証した。

しかしフェイサはそうせず、特殊技能ビザを使って合衆国に向かった。彼はアリゾナ州フラッグスタッフに移り住み、6か月後には彼の妻、息子、そして娘も彼の下に合流した。

立場を明確にする

アリゾナ州で暮らしている間も、フェイサはエチオピアの人権状況について公然と論じ続けた。彼はトレーニングも続けた。

「それが起こっていた時、時間はありました。私は出来事を自分の心の奥の思いに基づいて書きました。それは私に技術があるからではなく、人々が私のメッセージを受け取り、それを共有してくれるからです」とフェイサはVOAに話している。

「しかし私は運動選手なので、それほど人の心に訴えかける力はありません。でも私が感じていることを書いて人々がそれを共有してくれると、私はそれが嬉しいのです」と彼は付け加えた。

ハイレ・ゲブレセラシェはエチオピアの引退した陸上選手で、オリンピックで二度金メダルを獲得しており、現在はエチオピア陸上競技連盟に勤務している。彼はVOAにこう語っている。フェイサをもう一度招く決定は、態度を明確にするこの運動選手の積極的意志に関係していると。

「彼は生まれつき勇敢です。私は彼を個人的に知っていて、彼と親しかった。そして彼は、人々が何故虐げられなければならないのか疑問に思い、民族のために立ち上がったのです」。

アシェビル・ウルダギオルギスも同様の賛辞を表明した。彼は、フェイサは個人的に大きなリスクを冒して抗議したのだと話している。

「私はヒーローが好きです」とアシェビルは話す。「立ち上がり、声を上げる人を私は尊敬します」。

関係の再構築

エチオピアは、他にも幾人もの亡命中の市民に手を差し伸べている。

6月に非常事態を解除して以降、同国政府はいくつもの団体をテロ組織リストから外した。オロモ解放戦線メンバーの代表団は、火曜日に首都アディスアベバを訪問さえし、先週には政府への戦争行為を終結させることに同団体は同意している。

フェイサによれば、エチオピアに戻っても陸上競技の練習は続ける意向だ。それと共に、彼はこう言っている。「感謝の気持ちを分かち合いたいと思います。命を犠牲にした市民の方々に感謝したい…。この苦しい戦いに参加した全ての若者と高齢者に対して」。

フィル・ダーキンでした。

[ノート]
Ethiopian Olympian Living in Exile in US to Return Home:合衆国で亡命生活をしているエチオピア人五輪選手、帰国へ。(タイトル訳は少し改変)
Olympian:オリンピック選手
Return Home:帰宅・帰還・帰国・帰郷

event:(ここでは)種目・試合
Ethiopian:エチオピア人・エチオピア語
Feyisa Lilesa:Feyisa Lilesa (born 1 February 1990) is a male long-distance runner from Ethiopia. A member of the Oromo people,(英語版wikipediaより)
live in exile:亡命生活を送る
home:(ここでは)生地・ふるさと・故郷・故国
go back to:戻る・帰る
Ethiopia:エチオピア連邦民主共和国、通称エチオピアは、東アフリカに位置する連邦共和制国家である。首都はアディスアベバ。アフリカ最古の独立国および現存する世界最古の独立国の一つである。人口は約1億200万人(2016年7月推定)(wikipediaより)
after:(ここでは)~したので
athletic:運動競技の・体育の
organization:団体・協会・組織
be welcomed:歓迎される・迎えられる
例文welcomed as a liberator:解放者として迎えられる
hero:英雄・豪傑
Ashebir Woldegiorgis:Ashebir Woldegiorgis is a member of the Ethiopian parliament and former president of the Ethiopian Football Federation. (英語版wikipediaより)
president:(ここでは)会長
Olympic Committee:オリンピック委員会
call:招集・招き・命令・招聘・呼び掛け・必要・理由・根拠・要求・需要
例文The students gathered at the call of the dean.:学生たちは学生部長に呼ばれて集まった.
return:返還・返送・回復・回帰・帰国・帰郷
be meant to:~であることを意図されている
better:<動詞>~をよくする・~を改善する・~を向上させる
teach:教える・指導する・学ばせる・教訓を与える
exemplary:模範となる・称賛すべき・他の戒めとなる・立派な
athlete:運動選手・スポーツマン
strength:力・強さ・長所・強度
youngster:子供・若者
sign:象徴・シンボル・合図・しぐさ・表示・しるし・証拠・兆し・兆候・記号
protest:抗議・異議・反対・抗議行動・反対運動
make the news:ニュースに取り上げられる・ニュースになる
Rio de Janeiro games:第31回オリンピック競技大会は、2016年8月5日から8月21日までの17日間、ブラジルのリオデジャネイロで開催されたオリンピック競技大会。206の国と地域から約11,000人が参加し、実質19日間(開会式に先立ち男女サッカーの一部試合が行われた2日間を含む)に28競技306種目が行われた。一般的にリオデジャネイロオリンピックと呼称され、リオ五輪、リオオリンピックと略称される。(wikipediaより)
cross one's arms:(通常は)腕を組む
cross:(ここでは)交差させる
above someone's head:頭上に
finish a race:ゴールインする・レースを終える
move:運動・移動・動き・措置・処置・手だて・方法
support for:~への支持・支援・援助
anti-government protester:反政府抗議者
protester:抗議する人・反対する人・活動家
made the same sign:(同じポーズをした、は意訳)(記事文が分かりにくいのですが、多分ゴールインした時と表彰式と二回抗議のポーズをした、ということですね。)
例文make a V-sign for victory:勝利のVサインをする
receive a medal:メダルを受賞する・獲得する・授与される
At the time:その時は・その時点で
move towards:~に近づく・~に向かって進む・~に向かう
declare:宣言する・布告する・言明する・公表する
emergency rule:非常事態宣言
Violent:乱暴な・激しい・暴力的な
demonstration:実演・デモ・示威行動
spread:広まる・伝わる・ばらまく・展開させる
across:(ここでは)~のいたる所に・~の各地で
Oromia:オロミア州は、エチオピア南部の州。 面積は28万4538km2で、2015年の人口は3369万2000人。 人口密度は118.4人/km2。 エチオピアの全ての州・自治区の中で最大の人口・面積を持つ。 州都はアダマ。 公用語はオロモ語。 1995年に民族ごとに州が再編された際、オロモ人が多数を住める地域をまとめて組織された。(wikipediaより)
Ethnic:民族の・集団の
例文ethnic Albanian refugees:アルバニア系の難民
Oromos:オロモ人は、アフリカに住む民族のひとつ。オロモとはオロモ語で「力ある者」を意味する。エチオピア中南部のオロミア州に主に居住し、ケニア北部にも住んでいる。エチオピア最大の民族。(wikipediaより)
protest:抗議する・反抗する・異議を申し立てる
oppression:圧迫・弾圧・迫害・虐待・圧制
human rights violation:人権侵害
information minister:情報大臣
Getachew Reda:(資料見つからず)
congratulate:祝う・祝辞を述べる・祝いの言葉を言う
guarantee:保証する・請け合う
come home:帰宅する・帰国する・帰還する・帰郷する
special-skill:特殊技能
instead:~するのでなく・それよりむしろ・その代わりに
settle:落ちつく・定住する・植民する・住み着く
Flagstaff:フラッグスタッフ(Flagstaff)は、アメリカ合衆国アリゾナ州北部に位置する都市。(wikipediaより)
Arizona:アリゾナ州(英: State of Arizona)は、アメリカ合衆国の南西部にある州である。(wikipediaより)
join:(ここでは)合流する・参加する・落ち合う
Take a stand:態度を明確にする・立場を公言する・立場を明確にする
continue to:~し続ける
publicly:公開で・公然と・公式に・公の場で
discuss:議論する・話し合う・論じる・述べる・説明する
“There were times when things were happening,:(訳に自信なし。「時間がある」は、普通はhave time。timesっていうのもおかしい気がするが…。thingsは弾圧を指すのだろうか?)
参考while there's still time:時間があるうちに
and I wrote things from my inner thoughts,:(訳に自信なし)
write:書く・執筆する・書き留める
例文write from experience:経験に基づいて執筆する
例文write ~ from one's own experience:~を自分自身の経験として書く
inner thoughts:心の内・心の奥の思い
skill:技能・技術・腕前・力量
share:共有する・共に負う・分ける・分配する・伝える
that:そのくらい・それほど・それだけ・そんなに
I am not that appealing.:(訳に自信なし。「私の運動選手なので、人にそれほど訴えかける文章力はない」という謙遜かと推察するが…)
appealing:魅力的な・好ましい・訴えるような・人の心に訴える
Haile Gebrselassie:ハイレ・ゲブレセラシェ(Haile Gebrselassie, 1973年4月18日 - )は、エチオピアの陸上選手。専門は長距離走・マラソン。身長164cmと小柄ながら圧倒的な強さで『皇帝』と呼ばれる、エチオピアの国民的英雄である。5000m、10000m、ハーフマラソン、マラソンの元世界記録保持者。10000m走において1993年から1999年まで世界陸上4連覇を果たし、アトランタオリンピック・シドニーオリンピックでも2連覇。(wikipediaより)
retired:引退した・退職した
runner:走者・競争者
serve:仕える・勤務する・勤める
serve with:~に所属する
Federation:連邦・連合・連盟
参考International Association of Athletics Federations:国際陸上競技連盟
invite someone back:再び招待する・日を改めて招待する
be connected to:~とつながりがある・~と関係がある
willingness:意欲・やる気・いとわずにすること
willingness to:進んで~しようとする・~に対する積極的意思・~をいとわないこと
be born:(ここでは)生まれながらの・生まれつきの・根っからの
fearless:怖いもの知らずの・勇敢な・大胆不敵
know someone personally:個人的に知っている・直接知っている・面識がある
be close to:身近な・親しい仲の・親密な
question:質問する・疑問に思う・問題として取り上げる
oppress:虐げる・圧迫する・苦しめる
例文oppress one's people:国民を虐げる・人々に圧制を加える
stand up for:~のために立ち上がる・~のために決起する・~に味方する・~をかばう
one's people:部下・社員・従業員・自国民・自分の民族・自分の部族
express:言う・述べる・表す・示す・伝える・表現する・表明する
similar:類似の・同様の
praise:賛美・称賛
raise one's voice:声を張り上げる・大声を出す・苦情を言う・抗議する
at risk:危険にさらされて・危険を冒して
respect:尊敬する・敬意を表する
stand up:起立する・立ち上がる
speak up:声に出して言う・率直に話す・はっきりと言う・遠慮なく言う
Rebuilding:再建・建て直し・復元・改築・修理・復興・再構築
relationship:関係・結び付き・関連・関わり合い
reach out to:手を差し出す・手を差し伸べる・働き掛ける・心を通わせる
several:数個の・いくつかの
exiled:亡命中の・国外追放された
state of emergency:非常事態・緊急事態
lift:(ここでは)解除する・取り除く・撤廃する
remove:取り除く・取り去る・取り外す・追い出す・解除する・移動させる
terrorist organization:テロ組織
delegation:代表団・派遣団
Oromo Liberation Front:オロモ解放戦線・The Oromo Liberation Front (Oromo: Adda Bilisummaa Oromoo, abbreviated ABO; English abbreviation OLF) is an organisation established in 1973 by Oromo nationalists to promote self-determination for the Oromo people against perceived Abyssinian colonial rule.(英語版wikipediaより)
Addis Ababa:アディスアベバは、エチオピアの首都である。アディスアベバとはアムハラ語で「新しい花」を意味する。 2015年の人口は327.3万人。(wikipediaより)
agree to:~に同意する・合意する
end:終わらせる・やめる・絶つ・決着をつける・落着させる
hostility:敵意・敵対心・反抗・反対
hostilities:戦争行為・戦闘・敵対行為
train:練習する・訓練する
running:ランニング・走ること
Along with:~と一緒に・~と共に・~に加えて・~と同時に・~だけでなく
gratitude:感謝・感謝の気持ち・感謝の意
would like to:~したい
thank:感謝する・お礼を述べる
sacrifice one's life:命を犠牲にする・命をささげる・命を投げ出す
participate in:~に参加する・出場する・関与する・加わる
struggle:骨折り・奮闘・戦闘・争い・闘争・困難・努力・苦闘

関連する日本語の記事をいくつか紹介しておきます。まず、リオ五輪の際の記事。AFP-BBから「抗議のマラソン銀メダリスト、亡命の可能性も―エチオピアに帰国せず 2016年8月24日」 一部引用すると、
【8月24日 AFP】リオデジャネイロ五輪、陸上男子マラソンで銀メダルを獲得したフェイサ・リレサ(Feyisa Lilesa、エチオピア)は22日、政治弾圧に抗議するポーズを取ったことについてエチオピア政府が身の安全を保証したにもかかわらず、母国に帰国しなかった。
(中略)
 21日に行われたレースでは、ゴールする際にリレサが頭上で腕を交差させてエチオピア政府に抗議の意を示すと、表彰式でも再び同政府が反体制派の人々を弾圧していることについて抗議していた。リレサはその後、帰国することが怖いと語っている。
 報道では、リレサが米国に亡命し保護を受ける可能性があるとされているが、米国政府の広報官は今回の件について具体的なコメントは控え、「われわれはすべての政府が個人の意見を言う権利を尊重するよう促す」と述べた。
リオデジャネイロ・オリンピックの男子マラソンで、銀メダルを獲得したフェイサ・リレサ(エチオピア)の「抗議のバツ印」が、世界中で話題になった。自らの部族であるオロモ族を弾圧している母国エチオピアの政府に対する、命がけの抗議だった。
(中略)
リレサと彼の家族をサポートするために、8月21日に立ち上げられたクラウド・ファンディングサイトに、当初の目標額を10倍を上回る、11万3000ドル(約1130万円)が集まった(8月24日時点)。
(中略)
エチオピアでは、政府に土地を奪われることを懸念したオロモ族の人たちが、2015年から抗議活動を行っている。
人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチによれば、政府はデモ参加者を暴力的な方法で弾圧していて、2015年11月から500人以上が治安部隊に殺されている。治安部隊が武装していないデモをする群衆に向かって無差別に発砲したという報告もある。
今年の2月、東京マラソン2018の直前に、こんな記事が出ています。産経ニュースから「母国・エチオピアに抗議のリレサ「東京五輪に出られるなら…」 2018.2.24」 一部引用すると、
2016年リオデジャネイロ五輪銀メダリストのフェイサ・リレサが2年ぶりに東京マラソンに出場する。このエチオピア人ランナーは同五輪でフィニッシュの際、頭上で両腕を交差させ、自国政府に抗議したことで知られる。注目を集めた行動から約1年半。産経新聞の取材に「世界にエチオピア政府のことを知ってもらえて良かった。これからも発信していく」と語った。
(中略)
現在、28歳。20年東京五輪については「今はエチオピアから代表として出られない。出られるなら金メダルを狙いたい」と話した。
と、帰国の可能性を示唆しています。なお、この時の結果は6位でした。
で、今回の帰国決定に関して、CNN.co.jpから「マラソンで抗議のエチオピア選手、政府が身の安全を保証 2016.08.23」 一部引用すると、
ブラジル・リオデジャネイロ(CNN) リオデジャネイロ五輪の男子マラソンで政府の民族弾圧に対する抗議の意思表示をしたエチオピアの銀メダリスト、フェイサ・リレサ選手について、エチオピアの通信相は22日、本人や家族の身の安全を保証すると強調した。
(中略)
エチオピアのレダ通信相は、リレサ選手を「エチオピアの英雄」と形容し、帰国しても「心配すべきことは何もない」と強調した。
(中略)
オロモ族はエチオピアの人口約1億人の3分の1以上を占めていながら、長年にわたって冷遇されてきた。ヒューマン・ライツ・ウォッチなどの人権団体によると、全土で大規模な抗議運動を展開するオロモ族を治安部隊が武力で制圧。リレサ選手は「9カ月で1000人以上が殺害された」と訴えている。
しかしレダ通信相はこうした数字を「馬鹿げている」と一蹴。警察は標準的な手順に従って暴動を解散させたにすぎず、デモ隊の一部は銃や手りゅう弾を持っていたと主張する。
リレサ選手については「政治的な発言をする権利がある」と保証した。
うーん、帰国後、何事もなければいいのですが。