HEALTH & LIFESTYLE
Measles More Dangerous Than Experts Had Thought
November 08, 2019
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麻疹は医師がこれまで考えてきたよりも更に危険な可能性がある。研究者らが先週行った発表によれば、この疾患は患者が他の感染症を撃退するために獲得してきた免疫を破壊するのだ。

研究者らによる研究結果は、麻疹にかかった後、子供が何故しばしば他の感染性疾患にかかるのかを説明する役に立つ。この研究結果はまた、一部の国で幼児期の予防接種に対する反対が強まっていることの危険性も示している。

2つの研究が同様の結果に

最近の2つの研究で、病気に対する人体の天然の防衛手段を麻疹がどうやってリセットするかが初めて示された。

ベレスラバ・ペトロバは英国のケンブリッジ大学と、非営利の研究施設であるウェルカム・サンガー研究所に所属している。彼女はまた、一方の麻疹研究の共同代表でもある。

「これは…、人における『免疫学的健忘』の直接的な証明です。免疫システムが、以前に遭遇したことがある感染症への反応の仕方を忘れてしまうのです」と彼女は述べている。

遺伝学者で研究者のスティーブン・エレッジは2つ目の研究の共同代表だ。彼によれば、この結果が示しているのは「麻疹ウィルスが実際に免疫システムを破壊しているという非常に強い証拠」だ。

エレッジは合衆国のハワード・ヒューズ医学研究所に所属している。

この研究結果は、全世界の公衆衛生活動にとって重要である。ワクチン接種率の低下は一部の地域で麻疹の流行を引き起こしている。麻疹の蔓延は他の危険な病気、例えばインフルエンザやジフテリア、結核などが再発する原因となりかねない。

ワクチンの重要性

2回のワクチン注射で麻疹は予防することが出来る。この治療法は安全かつ有効であり、1960年代から利用されてきた。

しかし世界保健機関(WHO)の専門家は先月、世界各地で起きているワクチン接種を受けていない人々の間での症例の「憂慮すべき急増」を警告している。

今年の最初の3か月間で、症例数が2018年の同時期に比べて300%急増していることが、WHOの報告書で示されている。

「(麻疹の)ウィルスは我々の認識よりもはるかに有害です。それはつまり、ワクチンが一層重要だということです」とエレッジは指摘している。

この研究のために2つのチームは、オランダでワクチン摂取を受けていない人々の集団を調べた。麻疹が免疫系に何をするのか明らかにするためにだ。

一方の研究では、研究者らは26人の子供の抗体遺伝子を分析した。その後彼らは、子供が麻疹に感染して40日から50日後に採取された別のサンプルとその遺伝子を比較した。そして研究者らは、他の疾患に対して構築された特定の抗体が子供たちの血液中から消失していることを発見した。

2つ目の研究の結果では、麻疹への感染は子供の防御抗体の11%から73%を破壊することが明らかになった。こうした抗体は血液中のタンパク質で、過去のウィルスとの接触を「記憶して」おり、身体が反復感染を回避するのを助けるものだ。

ジョン・ラッセルでした。

[ノート]
Measles More Dangerous Than Experts Had Thought:麻疹は専門家が考えていたよりも危険(タイトル訳は改変)

Measles:はしか、麻疹
even more:更に一層
disease:病気、疾患
destroy:損なう、駄目にする、破壊する
immunity:免疫
victim:被害者、犠牲者、患者
develope:成長させる、発達させる、発展させる、開発する
例文develop partial immunity to:~に対する部分的な免疫を獲得する
fight off:撃退する、寄せ付けない、抑制する
infection:感染、感染症
finding:見つけたもの、研究結果、調査結果
catch a disease:病気にかかる、感染する
infectious disease:感染病、感染症、感染性疾患
have the measles:麻疹になる、罹る、感染する
resistance:抵抗、反対、妨害
childhood:子ども時代、幼児期、児童期、小児期
vaccination:ワクチン接種、予防接種
have the same result:同じ結果が出る
for the first time:初めて
reset:リセットする、セットし直す
natural:自然の、天然の、普通の、生まれながらの
defense:防御、防衛、防衛手段、防衛策、防衛力、擁護
Velislava Petrova:本人らしきtwitter
Cambridge University:ケンブリッジ大学(University of Cambridge)は、イギリスの大学都市ケンブリッジに所在する総合大学であり、イギリス伝統のカレッジ制を特徴とする世界屈指の名門大学である。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
Wellcome Sanger Institute:The Wellcome Sanger Institute, previously known as The Sanger Centre and Wellcome Trust Sanger Institute, is a non-profit British genomics and genetics research institute, primarily funded by the Wellcome Trust.(英語版wikipediaより)
参考:ウェルカム・トラスト(The Wellcome Trust)は、イギリスに本拠地を持つ医学研究支援等を目的とする公益信託団体。アメリカ出身の製薬長者のサー・ヘンリー・ウェルカムの財産を管理するため、1936年に設立された。その収入は、かつてバロウス・ウェルカム社(Burroughs Wellcome & Co)と名乗り、のちにイギリスでウェルカム財団(Wellcome Foundation Ltd., ウェルカム株式公開会社 Wellcome plc)と改称した団体から醵出されている。ウェルカム・トラストは民間団体としては世界で二番目に裕福な医学研究支援団体であり、その純資産は2006年9月30日時点で134億ポンドを越える。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
Institute:協会、機関、学会
not-for-profit:非営利
co-:共同の、共通の、相互の、副の、補助の
direct:直接の、単刀直入の、率直な
demonstration:実演、証拠、証明、立証、論証、表明
immunological:免疫学の、免疫学的な
amnesia:記憶喪失、健忘症
respond:答える、反応する
encounter:出会う、出くわす、遭遇する、直面する、降りかかる
Geneticist:遺伝学者
Stephen Elledge:Stephen Joseph Elledge (born August 7, 1956 in Paris Illinois) is an American geneticist. He is currently the Gregor Mendel Professor of Genetics and Medicine in the Department of Genetics at Harvard Medical School and in the Division of Genetics at the Brigham and Women’s Hospital, and is an Investigator with the Howard Hughes Medical Institute. (英語版wikipediaより)
result:結果、結末、成果、業績
Howard Hughes Medical Institute:ハワード・ヒューズ医学研究所(Howard Hughes Medical Institute, - いがくけんきゅうじょ)はアメリカ合衆国の実業家ハワード・ヒューズによって1953年に設立された非営利の医学研究機関。本部はメリーランド州。2017年現在の財産総額は225億8892万8000ドルで、ビル&メリンダ・ゲイツ財団に次ぐ全米第2位の規模である。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
public health effort:公衆衛生活動
effort:努力、取り組み
decrease:減る、減少する、低下する、低まる
lead to:通じる、つながる、至る、引き起こす、原因となる
outbreak:勃発、大流行、急激な増加
spread:発散、展開、普及、まん延
return:元に戻ること、返還、回復、復帰、再来、再発、回帰
influenza:インフルエンザ、流行性感冒
diphtheria:ジフテリア
tuberculosis:結核
Importance of:~の重要性
vaccine:ワクチン
injection:注射、注入
prevent:防ぐ、止める、阻む、抑える
treatment:治療、手当、治療法
effective:効果がある、効果的な、有効な
in use:使用中で、使われて
World Health Organization, or WHO:世界保健機関は、人間の健康を基本的人権の一つと捉え、その達成を目的として設立された国際連合の専門機関(国際連合機関)である。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
expert:専門家
warn:警告する、注意する
alarming:警戒すべき、憂慮すべき、人を不安にさせる、驚くべき、ただならぬ
upsurge:急増、急激な高まり、急騰
case:事例、実例、症例
unvaccinated:ワクチン接種が施されていない
jump:飛び跳ねる、跳ね上がる、急増する、急上昇する
much more:はるかに、格段に、ずっと
deleterious:有害な
realize:気付く、実感する、理解する、認識する
the vaccine is that much more valuable:(訳に自信なし。thatは強調の副詞?)
valuable:役立つ、有益な、重要な、貴重な
note:気付く、留意する、言及する、意味する、指摘する
find out:見いだす、解明する、理解する、明らかにする、気付く、見破る、答えを出す、謎を解く
examine:調べる、分析する、研究する、検査する
antibody:抗体
antibody gene:抗体遺伝子
compare:比べる、比較する
sample:サンプル、見本、標本、試料
specific:明確な、具体的な、特定の、特有の、個別の
build up:築き上げる、作り上げる、構築する、築く、発達させる
disappear:存在しなくなる、なくなる、消滅する、消失する
protective antibody:防御抗体
protective:保護する、保護用の、守る、防ぐ
blood proteins:血液中のタンパク質
remember:覚えている
past:過去の
contact with:~との接触
avoid:避ける、回避する、防ぐ
repeat infection:再感染、反復感染

関連する日本語の報道を2つ、紹介しておきます。まずAFP-BBから、

一部引用すると、
【11月1日 AFP】世界的に再流行している麻疹(はしか)は、これまで考えられていた以上に害が大きい──1日付の米科学誌サイエンス(Science)に掲載された研究で、はしかウイルスが免疫システムを「リセット」することが分かった。
(中略)
はしかウイルスは、過去にかかった病気を「記憶」する血液中のタンパク質である抗体を11~73%消し去る。免疫力が新生児ほどにまで低下する子どももいた。
もう一つ、東洋経済onlineから、

一部引用すると、
麻疹(麻しん、はしか)が流行している。10月2日、東京都品川区の企業で集団発生が報告された。品川区によれば、10月4日時点で10人の患者の診断が確定した。
流行は東京だけでない。9月以降、静岡県藤枝市や神奈川県横浜市でも発生が報告されており、流行は全国で確認されている。国立感染症研究所によると、2019年の麻疹報告数はすでに700例を超えており、近年で最も多い。
もちろん、これは氷山の一角だ。私を含め、多くの医師は麻疹を診察した経験が少なく、見落としている可能性も高い。
(中略)
まずやるべきは、この世代への追加接種だ。先に述べたとおり、厚労省の林・予防接種室長は10月18日に開催された自民党の第4回ワクチン勉強会で、「麻疹は95%の接種率が確保されている」と発言したが、国立感染症研究所の2016年の調査では、7歳児のMRワクチンの2回接種率は83%にすぎない。
(中略)
なぜ、厚労省が、この程度でお茶を濁すかと言えば、ワクチンの生産が間に合わないからだ。
わが国の麻疹ワクチンの生産量は、麻疹・風疹(MR)ワクチンとして年間に約290万本だ。200万本は小児の定期接種向けなので、成人に利用できるのは90万本となる。さらに成人を対象とした追加接種(第5期接種)として2019年度は70万人を見込んでいる。残るのは約20万本にすぎない。
2回接種を受けておらず、免疫に不安のある日本人の数は約570万人にも上る。単純に計算すれば、これらの人に行き渡るのは今から28年間もかかる。
ワクチンが必要で、国内で製造できなければ、海外から買えばいい。ワクチンを製造している企業は世界中にある。
ところが、厚労省はワクチンの「輸入」をかたくなに拒んできた。わが国でワクチン開発・販売を主導してきたのは、BIKEN財団、化学及血清療法研究所(化血研)、北里研究所などの非営利機関だ。