AS IT IS
Thailand's Latest Pro-Democracy Movement
October 10, 2020
e887bf95


タイで学生の虐殺が起きてから44年たって、ポヤニー・ティオはバンコクにあるタマサート大学に戻ってきた。

「彼らはどうしてこんな事を他の人間に対して出来たのでしょう?」と、この64歳の人物は問い掛ける。「あれからこの国は全く進歩がありません」。

ポヤニーは1976年10月6日、王政主義の支持者や治安部隊が多くの学生を殺害した時、この大学にいた。殺された学生やそれ以外の学生たちは陸軍元帥タノーム・キッティカチョーンのタイへの帰国に抗議していた。

1976年当時、抗議活動の参加者は新憲法を要求していた。今、タマサートの学生たちはもっと多くのものを求めている。

この大学は今回も民主化を要求する抗議運動の中心地となった。デモ参加者が求めているのは大規模な改革だ。

人々は政権交代と新しい憲法を要求している。最も重要なことは、この国の君主制を改革するよう求めていることだ。これまでずっと、タイ国では王室一族への批判は禁じられてきた。

今週初めにタイの人々は1976年の虐殺の日を迎えて、多くの地域で悲しみを感じていた。それはタイの長い民主化闘争の中でも最悪の日の一つと考えられている。

若者たちが追悼の日の為に大学に集まった。多くの人は当時の暴力事件を独学で学んでいる。この殺害の歴史は学校の教科書には載っていないからだ。

「虐殺は決して起こるべきではありませんでした。これは間違っています」と、15歳の高校生、プナパは話している。彼女は、しかるべき年齢になればタマサート大の法学部に入学するつもりだと話している。

「法だけが変革と正義をもたらし得るのです」と彼女は話している。

若い世代は古くからの戦いをしている

最近の抗議活動は民主化運動を活発化させる役に立ってきた。

若者たちは「自国の政治史に深く関わっている」と元学生リーダーで長年にわたり政治活動をしてきたシャトゥロン・チャイソンは述べている。「こうした暗い記憶が彼らの運動の原動力になっているです」と彼は聴衆に語った。

44年前に行われた殺害でこれまで裁判にかけられた者は一人もいない。

この暴力が、現代のタイにおける人々と国家との関係を形成しましたと、ヒューマン・ライツ・ウォッチのフィル・ロバートソンは指摘している。

「それ以来ずっと、タイの人々は暴力と処罰を免れることの連鎖を断ち切るために苦闘してきました」と彼は述べている。

政府と軍部はこれまでのところ、最近の抗議活動を容認してきた。しかし、君主制改革の要求によって抗議活動をする人たちは危険な領域に踏み込んでいる。陸軍幹部は王室に忠誠を尽くすことを誓っている。

タイが立憲君主制になったのは1932年だ。憲法は君主制の権力を制約しているが、それはしばしば無視されてきた。

タイで民主主義が軌道に乗ったことはない。政府は、王室派の軍が率いる勢力の手に落ちることがしばしばある。選挙で選出されて任期を全うしたのは、タクシン・チナワット一人だけだ。彼は2001年から2006年まで首相を務めた。

タクシンは地方の貧しい人たちの英雄だが、王室支持派からは嫌われていた。彼がついに解任された時、彼の追放は14年間にわたる政治的な問題や軍によるクーデター未遂、経済の弱体化につながった。

若いデモ参加者は現行政府のプラユット・チャンオチャの退陣を求めている。彼は軍の元幹部で2014年に政権を掌握した。

歴史は繰り返すか?

アノン・ナンパは弁護士であり、君主制の改革を最も強硬に求めている発言者の一人だ。追悼が行われた火曜日、彼は「我々は戦い続けることを誓う」と話している。

非常に裕福で軍によって守られているタイの国王、マハ・ワチラロンコーンとその家族はこれまで、デモ参加者によって批判されたことはなかった。しかし今、状況は変わっている。

アノンや民主化運動の他の指導者の何人かが国王に対し、1932年の憲法を順守するよう要求している。

国王がその位に就いたのは2016年だ。それ以来、彼はその富と軍特殊部隊の指揮権を自らの権力を強めるために使ってきた。

抗議団体によれば、彼らは10月14日にバンコクで平和的なデモを行うために集まることになっている。政治評論家は、政府に何らかの影響を与えるためには少なくとも3万人の抗議者が参加することが必要だと話している。

スーザン・シャンドでした。

[ノート]
Thailand's Latest Pro-Democracy Movement:タイの最近の民主化運動(タイトル訳は少し改変)

massacre:大虐殺、皆殺し
Pojanee Theil:(資料見つからず)
Thammasat University:タマサート大学はタイ王国にある大学。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
Bangkok:バンコク都もしくはクルンテーププラマハーナコーンは、タイ王国の首都。タイでは、クルンテープの通称で呼ばれている。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
go nowhere:行き詰まる、全く進歩がない、らちがあかない、暗礁に乗り上げる
since then:それ以来、その時から、その後、それから
royalist:王党派の、王政主義者の
supporter:支持者、後援者、信奉者
security force:治安部隊、警護隊
protest:~に抗議する、反抗する、~に異議を申し立てる
Army:陸軍
Field Marshall:陸軍元帥
Thanom Kittikachorn:Field Marshal Thanom Kittikachorn ; 11 August 1911 ? 16 June 2004) was a Thai military dictator. A staunch anti-communist, Thanom oversaw a decade of military rule in Thailand from 1963 to 1973, during which he staged a self-coup, until public protests which exploded into violence forced him to step down. His return from exile in 1976 sparked protests which led to a massacre of demonstrators, followed by a military coup.(英語版wikipediaより)
protester:抗議者、抗議をする人、デモに参加する人
call for:求める、要求する、呼び掛ける、必要とする
constitution:憲法
once again:再度、もう一度、今度も、前と同じように、またしても
pro-democracy protest:民主化を求める抗議行動
pro-democracy:民主主義を支持する、民主主義派の、民主化を求める
Demonstrator:デモ参加者
reform:改革、刷新、修正
change of government:政権交代
Most importantly:何よりも、最も重要なのは
reform:<動詞>改革する、刷新する、正す、修正する、矯正する、改心させる
monarchy:君主制
Up until now:今までは、現在までのところ、今に至るまで、これまでは
bar:禁じる、禁止する
criticism of:~への批判
ruling family:支配一族
ruling:権力の座にある、支配する、優勢な、支配的な
Sadnesst:悲しさ、悲しみ、不幸、悲哀
Thais:タイ人
mark the anniversary of:~を記念する
例文mark its __th anniversary:_周年を迎える
anniversary:記念日、記念祭、~周年
consider:~と考える、見なす、認める
darkest:最も暗い、暗黒の、最悪の
例文during someone's darkest days:の人生最悪の日々に
struggle:奮闘、苦闘、骨折り、争い、闘争
gather for:~ために集まる
memorial:記念の、追悼の
例文memorial ceremony:追悼式、慰霊式
teach oneself:独学する
violent event:暴力事件
of that time:当時の、その時の、あの時代の
Punnapa:(資料見つからず)
plan to:~する方針を立てる、~を計画する、~するつもりである
join:加入する、参加する
例文join a school:学校に入学する
department of law:法学部
bring change:~に変化をもたらす、変革をもたらす
justice:公正、正義
New generation fights old battles:(訳に自信なし)
fight a battle:戦う
例文fight a long battle against:~と長期間戦う
例文fight a losing battle:勝ち目のない戦いをする、負け戦をする
fight:格闘する、戦う、口論する、競い合う、競争する、抵抗する、奮闘する
battle:戦争、戦い、決闘、論争、議論、闘争
latest:最近の、最新の、今の
energize:エネルギーを与える、活力を吹き込む、活気づける、元気づける、激励する、活発にする、活動させる、活性化する
democracy movement:民主主義運動、民主化運動
be engaged in:~に従事している、~に携わっている、関与する、取り組んでいる、絡んでいる
political history:政治史
Chaturon Chaisang:Chaturon Chaisang or Chaisaeng (born January 1, 1956) is a Thai politician. He was a government member for several terms, serving as Minister of Justice, Deputy Prime Minister, and Minister of Education in the cabinets of Thaksin and Yingluck Shinawatra.(英語版Wikipediaより)
former:前の、かつての、元の
student leader:学生リーダー
long-time:長年の、長期間
political activist:政治活動家
dark memory:暗い記憶
driving force:原動力、推進力、駆動力、立役者、推進役
movement:運動、活動
crowd:群衆、大衆、民衆、聴衆、観衆
be tried for:裁かれる、裁判にかけられる
take place:行われる、挙行される、起こる
violence:暴力、暴行、脅し、猛威
shape:形成する、形作る、方向付ける
relationship:関係、結び付き、関わり合い、関連
state:状態、ありさま、段階、状態、様子、国、国家、政府、行政
modern:現代の、今の、近代の、最新の
note:言及する、述べる、指摘する、強調する
Phil Robertson:(資料見つからず)
Human Rights Watch:ヒューマン・ライツ・ウォッチ(英語: Human Rights Watch)とは、アメリカ合衆国に基盤を持つ国際的な人権NGOでニューヨーク市に本部を置く。世界各地の人権侵害と弾圧を止め、世界中すべての人々の人権を守ることを目的に、世界90か国で人権状況をモニターしている団体である。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
ever since:その後ずっと、それ以来
break a cycle of:~の循環を断ち切る、連鎖を断つ
impunity:処罰を受けないこと、罰せられないこと、とがめがないこと、免責
military:軍隊、軍部、軍人
so far:今までのところ
permit:許可する、許す、認める、容認する、同意する、可能にする
move:移動させる、進める、動かす
chief:長、局長、長官、所長
例文military chief:軍隊幹部
例文Army Chief General:陸軍参謀長
promise:約束する、誓う、断言する
remain loyal:ずっと忠誠を尽くす
例文remain loyal to the country:国にずっと忠誠を尽くす
royal family:王室
constitutional monarchy:立憲君主制
ignore:無視する、顧みない、黙殺する
Democracy:民主主義、民主制、デモクラシー
work:機能する、動作する、稼働する、効く、役に立つ、うまくいく、功を奏する、軌道に乗る
fall to:(ここでは)~のものになる、倒れる、陥落する、転落する、失脚する
例文The city fell to the rebels.:その都市は反乱軍の手に落ちた
force:部隊、軍隊、勢力
例文antigovernment force:反政府勢力
elected leader:選挙によって選ばれた指導者
Thaksin Shinawatra:タクシン・チナワット(1949年7月26日 - )は、タイ王国華裔客家人、タイ王国出身の実業家、政治家。拓殖大学客員教授。イングランド・プレミアリーグのマンチェスター・シティFC元会長である。漢字名:丘 達新。首相(第31代)、下院議員を務めた。元警察官僚である。タイ北部のチエンマイの出身、華僑系のチナワット家の出である。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
complete:完了する、仕上げる、終える、完結する、完成する、達成する、修了する
full term:満期
serve:仕える、勤務する、勤める
countryside:田舎、地方、田園地方
hate:憎む、嫌う、嫌がる
finally:やっと、ようやく、ついに、とうとう
remove:解任する、去らせる、排除する、追い出す
ouster:追放、罷免、更迭
lead to:~に通じる、つながる、~を引き起こす、~の原因となる
political problem:政治問題、政治的難題
military overthrow attempt:(訳に自信なし。)
military:軍の、軍隊の、軍部の
overthrow:打倒、転覆、崩壊
attempt:試み、企て
例文attempt of suicide:自殺未遂、自殺の試み
weak economy:弱い経済
force out:解雇する、首にする、追い出す
例文force someone out of office:強制的に辞任させる、退陣させる
Prayut Chan-o-Cha:プラユット・チャンオチャ(1954年3月21日 - )は、タイ王国の軍人(陸軍大将)、政治家、首相(第37代)。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
take power:権力を握る、政権を掌握する
Anon Nampa:Anon Nampa (Anon Nampha, also spelt Anon Numpa) is a Thai human rights activist, lawyer, pro-democracy activist and political activist. He is renowned in Thailand for openly criticizing the monarchy of Thailand, breaking the country's taboo.(英語版Wikipediaより)
lawyer:弁護士、法律家
voice:代弁者
例文strong voice for reform:改革のための強力な発言者
memorial:記念の、追悼の
Maha Vajiralongkorn:ラーマ10世(1952年7月28日 - )は、タイ王国チャクリー王朝の第10代タイ国王(在位: 2016年10月13日 - )。ラーマ9世とその王妃シリキットの間の唯一の男子(長男:第2子)。王太子在位時代より正式名称の一部からワチラーロンコーンと呼ばれる。ワチラロンコーン、ワチラロンコンなどとも表記される。(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
criticize:批判する、非難する
in the past:昔は、従来、これまでに
follow:従う、守る
come to power:権力者の地位に就く、権力の座を獲得する
wealth:富、財産
control:操作する、制御する、規制する、支配する、統制する
special army troops:軍特殊部隊
increase one's power:自分の権力を増す
protest group:抗議団体
meet:会合する、集まる、落ち合う
peaceful demonstration:平和的なデモ
Political observer:政治評論家
attend:出席する、参加する
have effect:効果がある
effect:効果、効き目、効力、結果、影響

'Thaksin Shinawatra, has completed a full term. ' Wikipediaによれば、
日本時間2006年4月4日午後11時に国王に退陣を表明、次期首相が決まるまで休養に入った。当面の間、首相の職務はチッチャイ・ワンナサティット副首相が代行することとなった。しかし、実際には暫定首相としてタクシン首相が職務を行い国民からの反発を招き、2006年9月19日のクーデターに繋がった。
彼も途中で退陣しているように見えるのだけれど…。

関連する日本語での報道を二つ紹介しておきます。東京新聞から、

一部引用すると、
 タイで、プラユット政権の退陣などを求める反政府デモが拡大し王室批判も公然と語られ始めた。「現政権は軍事政権の続き」とみられているためだが、流血の事態は絶対に避けなければならない。
 タイでは、昨年の総選挙で五年間の軍政に表向き終止符を打ったが、首相には軍政のトップだったプラユット氏が就任。さらに二月、若者らが支持した野党が憲法裁判所に解党を命じられ、反政府運動に火が付いた。
(中略)
 先週末には、首都バンコクの王宮前広場に若い世代ら数万人が集結。王室批判を前面に出し、王室関連予算の透明化や王室への表現の自由などを求めた国王あての請願書を警察当局に委ねた。王室擁護の政権との対立は決定的となったが、最悪の衝突は避けられた。
 元来、軍部と民主化勢力との衝突などで政情が不安定なタイでは第二次大戦後だけで十数回のクーデターが起きている。七三年には、当時の軍政に抗議する学生ら七十七人が死亡する「血の日曜日事件」が起きた。軍政は崩壊し前国王の任命によって文民政権が誕生したが、代償は大きかった。
(中略)
 学生らの次回の大規模デモは十月十四日という。「血の日曜日事件」と同じ日で、プミポン前国王の命日の翌日。平和的なデモと冷静な対応が求められる。その上で政権は、議会の解散・総選挙を含め、民主的な手法で混乱収拾の手だてを考えるべきではないか。
ちなみに1973年の「血の日曜日事件」は今回VOAが取り上げた76年の「タンマサート大学虐殺事件または血の水曜日事件」の前に起きた大きな事件。
もう一つ、WEDGE Infinityというサイトから、

こちらは長めの解説記事です。興味ある方は是非。