Health & Lifestyle
Rich People Even Have Better Stress Than Poor
May 16, 2016

VOAのリンクはこちら→Rich People Even Have Better Stress Than Poor
For VOA Learning English, this is the Health & Lifestyle report.

富裕な人の生活はどんどん良くなっているように見える。富裕な人は一般的に貧しい人より良い家に住み、通常はより良い仕事に就き、子供もより良い学校に通わせている。

今、新たな研究で判明したことは、富裕な人はストレスさえも貧しい人よりも上質という事だ。

ストレスとは、様々な要求や脅威に対して脳が反応する方法だ。 アメリカ心理学会によれば、ストレスは人体が持つ「戦うか逃げるか反応」の一部だという。

危機に直面した時、ストレスは攻撃してきたものを撃退する力を生み出すことができる。体内でホルモンを放出させ、心拍数や血圧を引き上げる。

それが古代におけるストレスだ。現代社会では、ストレスは仕事で素晴らしいプレゼンをしたり、スポーツ大会で勝利するのを助けてくれる。これは短期のストレスで、短期のストレスは目標達成の成功へと導いてくれる。

これが良いタイプのストレスで、お金持ちの多くが抱えているストレスはこのタイプだ。

しかし、生活や仕事の様々な問題がストレスの原因となり得る。ストレス要因とは、支払えない請求書のことであり、間際になって子供を預かってもらえなくなることであり、車のエンジンがかからないことだ。

こうしたストレス要因によって、専門家が慢性的なストレスと呼ぶものが増大する。新たな調査によれば、合衆国の多くの貧しい人が直面しているのはこちらのストレスだ。公共政策集団であるブルッキングス研究所が、調査結果を発表している。

アメリカ心理学会はウェブサイト上で、慢性的ストレスは人の心身の健康に影響することを指摘している。人は、こうした慢性的なストレス要因に毎日対処していると、「戦うか逃げるか反応」のスイッチが「ON」に入りっぱなしになってしまう。

そして、慢性的ストレスとは貧しい人のストレスだ。

貧しい人はしばしば、自分では制御できないストレスに満ちた状況を経験する。ある日、何か一つうまくいかないことが生じる。例えばタイヤがパンクするとか、体調が悪くなった子供を学校まで迎えに行くといったことだ。すると彼らの生活は手におえない悪循環に陥ってしまう。これが、巨大な慢性的ストレスを生み出す。

一部の人々は、しばしばトンネルの出口の灯りが見えない状況になる。日々のストレスは止むことがなく、身体を疲弊させていく。病気に対する自然な防御力をむしばみ、心臓に負担をかけ、筋肉を疲労させ、鬱の原因となり得る。

身体的な問題だけでなく、慢性的な日々のストレスは他の問題も生じさせる。

人は、今日一日のやりくりを何とかしのいでいる時に、明日の計画を立てるのは困難だ。貧しい人はしばしば、長期的な目標への計画を立てて成功裏に完遂するための時間も、体力も資金も持っていない。日々の生活のための辛い仕事があるので、より良い仕事を得ることを願って夜間に大学の講義を受講することはさらに困難になる。

富裕な人もストレスを受け困難に直面する。しかし、彼らの状況は大きく異なる。富裕な人のストレスはしばしば職業上の出世に関連している。それは短期的なストレスであり、長期的な目標への到達を助けるものだ。

もちろん、富裕な人々にも酷い出来事が起きることはある。しかし彼らには通常、より良い備えがある。

富裕な人は通常、良い生命保険に加入している。 彼らには、しばしば遥か大学時代、更に高校にまで遡れる多くの職業上の人脈がある。そうした人とのつながりは、仕事の一つを失わねばならなくなっても、他の仕事が見つかるのを助ける。([ノート]に注記あり)

お金がある人は通常、貧しい人よりも良い医師や医療を受診することができる。家族の誰かが例えば薬物依存になれば、お金がある人はその家族を薬物治療センターに入れることができる。

富裕な人は、貧しい人にはなかなかできないような支援を利用することができる。

貧しい人は、子供が学校で悪い成績を取ってとても心配することがある。お金がある人は、子供のために家庭教師を雇うことができる。別の表現を使えば、富裕な人々はお金で彼らの問題を解決することができる。これでストレスを大幅に減らすことができる。

慢性的なストレスが合衆国の貧しい人々の間で問題となり得ることを指摘するのは重要だ。他の国では、貧しい人はそのような種類のストレスを経験しないかもしれない。

ブルッキングス研究所の調査によれば、アメリカ人で最もリスクが高いのは一般的に教育水準が低く低所得な白人だ。自殺率や処方薬への依存症はこのグループで増加傾向にある。

同調査によって、アメリカ人は貧富の違いによって生活満足度やストレスの差異が非常に大きいことが判明している。

アンナ・マテオでした。

[ノート]
American Psychological Association:米国心理学会 APA
fight-or-flight response:闘争逃走反応・攻撃か逃避か反応 1929年にウォルター・B・キャノンによって初めて提唱された動物の恐怖への反応である。キャノンの説によると、動物は恐怖に反応して交感神経系の神経インパルスを発し、自身に戦うか逃げるかを差し迫るという。(wikipediaより)
fight off:撃退する・抑制する
accomplish:成し遂げる・手柄を立てる・勝ち取る・達する
Stressor:ストレス要因・ストレスを引き起こす原因となる因子
childcare:保育・児童保護
fall through:失敗に終わる・実現されない・中止される
at the last minute:土壇場で・直前になって
add to:~を加える・~を増加させる
chronic:慢性の・長続きする・習慣的な
The Brookings Institution:ブルッキングス研究所 アメリカ合衆国のシンクタンク。1916年にロバート・S・ブルッキングスによって「政府活動研究所」として創立。中道・リベラル系のシンクタンクとして長い伝統と実績を残していて、特に民主党政権には政策的な影響を及ぼすと共に、人材を輩出してきた。(wikipediaより)
finding:発見したもの・結論・調査結果
note:書き留める・気付く・注目する・言及する・指摘する
deal with:問題に取り組む・解決しようとする・対応する
stuck in:~にはまり込む・~から逃れられない・抜け出せない
beyond one's control:制御できない・手に余る・力の及ぶところではない
go wrong:道を誤る・身を誤る・計算などが狂う・失敗する
flat tire:タイヤのパンク(タイヤが平らになる)
light at the end of tunnel:前途の光明・苦しみの後に見えてくる光・解決や成功の目途
day-to-day:日々の・その日限りの・その日暮らしの
lets up:止む・やわらぐ・弱まる
wear down:すり減らす・徐々に破壊する・疲れさせる・参らす
harm:害する
depression:低下・減退・不況・意気消沈・絶望・鬱
barely:かろうじて~する・~するのがやっと・ぎりぎり・ほとんど~ない・わずかに
make ends meet:生活の収支を合わせる・収入の範囲内でやりくりする・やっていく
grind:粉を挽くこと・つらい仕事・単調な仕事・ガリ勉
in hope of:~を望んで・~を期待して・~するつもりで
life insurance policy:生命保険証券 policy:保険契約
contact:接点・人のつながり・交流・関係
far back:はるか昔・ずっと以前

These connections can help them get another job should they lose the one they have. 訳文が正しいか疑問。その前の一文も自信がない。

dependency:依存状態
have access to:出入りできる・面会できる・利用できる
grade:等級・傾斜・成績・評価
tutor:家庭教師
throw money at:~をお金で解決する
prescription drug:処方薬
on the rise:上昇中・上昇傾向
poll:世論調査・選挙の投票

貧困が慢性的なストレスを生じさせ、それが様々な問題につながる、という話でした。VOAの記事中では「In other countries, the poor may not experience the same kind of stress.(アメリカ以外の国ではこんなことはないかもしれない)」と書かれていますが、日本は確実にアメリカ側の国でしょう。
記事の最後の方で、自殺率が高いのは低学歴低所得な白人とありましたが、日本でも学歴所得と自殺には同様の相関があります。
国立がん研究センターなどのチームが、日本疫学会誌「Journal of Epidemiology」(電子版)の2016年4月9日号に発表した「Educational Levels and Risk of Suicide in Japan」という論文は、「学歴が低いほど自殺リスク高くなる」とするものでした。英文ですが、RESULTだけ引用すると、

RESULTS:
The HR for university graduates or those with higher education versus junior high school graduates was 0.47 (95% CI, 0.24-0.94) in men, and that for high school graduates versus junior high school graduates was 0.44 (95% CI, 0.24-0.79) in women.

男性では大卒や高学歴者の自殺率は中卒者の47%。女性では、高卒者の自殺率は中卒者の44%、とあります。J-CASTニュースで紹介されていますのでご参考まで。
また、舞田敏彦氏のサイト「データえっせい」から「生活保護受給者の自殺率(2010年)」のグラフを引用します。

生保自殺②
生活保護受給者は最大で5.5倍も自殺率が高くなっています。同じく「データえっせい」から「失業と自殺の時系列的相関 」を引用します。
失業①
男性の失業率と自殺に非常に高い相関があり、失業すると一気に自殺にまで追いやられてしまう、セーフティネットの不足が窺えます。
また、日本人は他人の貧困に冷淡な傾向があります。「自己責任」論が強い国です。
国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩氏が行ったアンケートがYAHOOニュースで紹介されています。
「現在の日本社会において、12歳の子供が普通の生活を送るために、以下の事柄は必要だと思いますか?」という設問で様々な事項を聞き、四択で、「希望する全ての子供に、絶対に与えられるべきである」と回答があった比率です。
20140131-00032162-roupeiro-001-12-view
驚くことに、13-14%の人は医者や歯医者にかかることを「絶対に与えられるべき」と認めてくれません。日本人の7-8人に一人は、貧しい人は医者にかかれないことがあってもやむを得ないと考えているのです。嘘でしょ? 高校教育を絶対与えられるべきと認めてくれる人は6割。貧乏人は本人が希望しても高校に行けなくても仕方ないと考える人が4割もいることになります。年に一度の遊園地は3分の1、自転車を認めてくれる人は2割。友達が自転車移動している時に、貧乏人の子は走って追いかけろということでしょうか? 阿部氏は他の先進国で行った同様の調査に比べ、日本人の回答は厳しいことを指摘しています。
貧しい日本人が直面しているストレスの大きさが心配になります。