As It Is
10,000 Girls Explore Science Careers
May 22, 2016

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コロラド州デンバーにある科学博物館は、科学者へと育つアメリカ人少女の人数を増加させるべく活動している。

デンバー自然科学博物館は最近、「女の子と科学の日」を開催した。このイベントは1万人以上の少女に科学の分野で活躍する女性と会い、その女性たちから科学の分野でキャリアを築く話を聞く機会を提供した。

合衆国では、科学者と技術者の多くは男性だ。男の子に比べて、科学者になる女の子の数は少ない。

アメリカの教育専門家は「STEM」と言われる四分野の重要性を長らく指摘してきた。STEMとは、science(科学)、technology(技術)、engineering(工学)、そしてmathematics(数学)のことだ。専門家は、STEM分野の女性の人数を増やすには早い時期の取り組み開始が必要だと考えている。少女が中学生か、あるいはもっと早い時期だ。

「女の子と科学の日」のために、デンバー自然科学博物館は300人以上の女性を博物館に招いた。その女性たちは全員が科学に関する領域で働いているが、それぞれに異なる分野の専門知識を持っている人たちだ。

女性たちはボランティアとして時間を割いて少女たちと会話をし、自分たちの仕事を実演して見せた。ボランティアの一人、ダニエラ・カスティネーダは環境技術者だ。彼女は、デンバー市がいかにして水を確実に飲んでも安全なものにするかモデルを使って表現した。

「そしてほら、底の方から出てきた水がとてもきれいなことが見えるでしょ。これが、私たちが水処理施設ですることなの。フィルターを使って…」

博物館ではまた、少女たちにおもちゃの鳥を捕獲する体験をさせている。ボランティアのエミリー・スノーブレナマンは野外で調査する生物学者だ。彼女は少女たちとその家族たちに、本物の鳥の習性を研究するためにどんなことを行うか説明した。

「私たちは、この無線追跡機と呼ばれる小さな装置を鳥に実際に取り付け、鳥の背中に接着します。それで、我々は鳥たちの動きを追跡できるのです。」

もう一人のボランティア、ティナーシャ・ロスは航空宇宙技術者だ。彼女は国際宇宙ステーションで使われていたコンピュータの回路基板を少女たちに見せて、この機材は修理が必要だと説明した。

「私がこの基盤を顕微鏡の下に置くから、顕微鏡のおかげでこの部分が良く見えるようになったら私に教えてね。わかったかな?」

「わかった」

「よし、じゃあ置くわよ」

「女の子と科学の日」には男の子も歓迎だ。博物館は、女の子にも男の子にも科学者になる機会があることを知って欲しいと考えている。

クリストファー・ジョーンズクルーズでした。

[ノート]
Explore:探検する・探る・調査する・検証する

seek:捜す・捜し出す・求める・得ようとする・手に入れようとする・~しようと努める
middle school:中学校・5または6学年から8学年までを対象とする学校 アメリカは日本の高校に相当する年齢まで含めてK-12と呼ばれる12年間の義務教育があるが、それを小中高校にどう分けるか多様性がある。middle schoolは4-4-4制をとる地域の中間の4学年を教育する学校を指す場合もある。
expertise:専門知識・専門技能・助言
volunteer one's time:ボランティアとして時間を割く
demonstrate:実演する・実地説明する・はっきり示す・論証する
make sure:~を確かめる・確認する・確実に~をする・確信する
water treatment plant:浄水場・水処理施設
capture:捕らえる・捕獲する・占拠する
glue:接着する
aerospace engineer:航空宇宙エンジニア・航空宇宙学の技術者
circuit board:回路基板
International Space Station:国際宇宙ステーション 略称ISSは、アメリカ合衆国、ロシア、日本、カナダ及び欧州宇宙機関 (ESA) が協力して運用している宇宙ステーションである。1999年から軌道上での組立が開始され、2011年7月に完成した。(wikipediaより)
be in need of repair:修理が必要である

日本でもリケジョ(理系女子)が少ないという議論はよく出ますが、アメリカも似たような状況のようです。では、それを国際比較してみます。舞田敏彦氏のサイト「データえっせい」から「25~34歳の理系専攻率の国際比較」というグラフを引用します。縦軸が女性の理系専攻率、横軸が男性です。
理系率②
アメリカは確かに(男女ともに)理系専攻率が割と低い位置にいます。女性では22か国中ワースト5位でしょうか。しかし、やはり気になるのは日本が左下の端つまり最下位にいることです。女性は最下位、男性もカナダと最下位争いです。ただこれは、学部別定員で文系学部が肥大している結果であり本人の意向は違ったかもしれません。
そこで同じく「データえっせい」から「15歳女子生徒の理系志向の国際比較」というグラフを引用します。これは、2006年のPISAテストの際に「将来理系の勉強・職に進みたいか」という趣旨のアンケートを行った結果で、本人の意向を示しています。(数字は%ではなく意向の強さを示す指数です)
女子の理系③(2012年11月8日)
日本、57か国中でまさかの最下位。悲しい結果です。(アメリカは中位程度ですね。)

理系3
その結果、理学部・工学部に占める女性比率は今も低くなっています。(グラフは「理系女子・女性研究者を増やすために― 国立女性教育会館の取組から」の内海房子氏の資料から引用しました)
なぜそうなるのでしょう? いくつか容疑者を考えてみました。一つは、自信の欠如、自己評価の低さです。再度「データえっせい」から「科学の得意率・平均点と理系職志望」のグラフを引用します。これは、IEA(国際教育到達度評価学会)が行った「TIMSS 2011」という算数・数学及び理科の到達度に関する国際的な調査のデータを使ったもので、対象は中学2年生、縦軸が科学の国別平均点、横軸が「科学は得意だ」と思っている生徒の比率、プロットの円の大きさが理系職志望率です。これは男女合わせたものです。
科学②
見ると、日本は左上にいて円が小さい。これは、実際には科学の点数はかなり高いのに、自信は各国中最下位で、理系職志望率も最下位、という結果です。もったいない。全体にプロットは逆相関で点数が高い国の方が自信が低い傾向がありますが、シンガポールや台北・韓国と比べ、日本の若者の自己評価は低すぎます。日本で平均点なら、世界では上位なのに。日本では謙虚さが礼儀正しいと言われますが、過度な萎縮は国家的な損失です。教育現場ではもっと褒めて自信をつけさせる必要があるように思えます。

OECDは「幼少期の男女格差が将来のキャリア選択と雇用機会に影響」というレポートの中で、日本に限らず世界的に女性の理系志向が低いのは「その原因の一端は、両親、教師、雇用主の間に見られる、意識的、無意識的な性別間の偏見に」あるとしています。一部を引用すると、

国際学習到達度調査(PISA)の科学テストでは男女とも同じ成績であるにもかかわらず、科学・技術・工学・数学(STEM)分野のキャリアに就こうと考える生徒の割合は、男子の5人に1人に対し、女子は20人に1人以下です。これが何故重要かというと、これらの分野のキャリアは旺盛な需要があり、最も高給なキャリアの一つといえるからです。
PISA調査によれば、女子は科学と数学に関しては男子より自信がないものの、新たな分析は、両親の後押しの著しい差がこの問題をさらに悪化させていることを明らかにしています。
息子と娘の能力が同じ場合でも、息子に対してSTEM分野のキャリアに就くことを期待している両親の比率は、娘に対して同じ期待を抱いている両親の比率よりはるかに高くなっています。

分かる気がします。親だけでなく教師にもまだ、STEM系は男子向きという無意識の進路指導差別が残っているかもしれません。
更に、ワークライフバランスの問題もあります。つなぽん氏のブログ「つなぽんのブログ 生物学者♀のたまごつなぽんのポスドク日記。」のエントリー「女性研究者のワークライフバランス 私、トップ研究者は諦めようかな…」で、そうした悩みが吐露されています。出だしを一部引用します。
私はなんとなくダラダラと研究を続けていたら博士課程まで来て学位をとってしまった口なのですが、流石にここまで研究を続けると、「この分野でトップを取ってやるぜ!」という気持ちも湧いてくるわけですよ。
(中略)
が。
女性って、妊娠、出産っていうライフイベントがあるんですよね?。
(中略)
年齢的なこともあって真剣に結婚出産について考えてみると、ふと気づいたんですよ。
あれ…これこのまま研究してたら絶対子育て無理じゃねぇ?
と。

以下、具体的な問題点の分析が続きます。この方は大学の研究室にいるのでそこでの働き方の問題ですが、民間企業で働いても同じ問題はありそう。
リケジョを増やす道程はまだまだ遠そうです。