6 Minute English
How to cure writer's block
EPISODE 160811 / 11 AUG 2016
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ミューズとは何者で、どうやって創造する行為を助けてくれるのでしょう? ニールとアリスはニールの詩と、作家がスランプに対処する興味深いいくつかの方法について議論します。

[台本]

アリス:こんにちは、6 Minute Englishへようこそ。私はアリス…

ニール:そして僕はニール。君は詩を書いたことはあるかい、アリス?

アリス:ないわ。あなたはあるの?

ニール:あるとも。若い頃は詩集を作ったことがあるよ。

アリス:何かの'sheaf'とは、物を束ねること。特に紙を。で、今はどうなの? まだ書いているの?

ニール:いいや。僕の創造力はもう枯れてしまったから。

アリス:それは残念! あなたの詩が聞きたかったのに! 'Creative juices'とはアイデアが浮かぶこと。そして今日の番組の話題は、創造力と作家がスランプで創作に行き詰ることです。'writer's block'とは、精神的な原因で作品が書けなくなること。

ニール:じゃあ、テニス肘やゴルフで膝を痛めるのとは違うわけだ。

アリス:違うわ、ニール。精神的な原因とは心にかかわる物で身体ではないから。一部の人は作家のスランプなんてデタラメだと見なす一方で、一部にはそれは深刻な精神的な健康問題で、治療によって改善し得ると考える人もいます。

ニール:では、君に質問ですよ、アリス。「ダ・ヴィンチ・コード」の作者ダン・ブラウンはどういう方法でスランプ解消を図ったでしょう? それは…
a) グラビティブーツを使って、天上から逆さ吊りでぶら下がる?
b) 寝室が六つある自宅を、隅から隅まで歯ブラシで掃除する?
それとも c) リヒャルト・ワーグナーの歌劇を聞きながらハーフマラソンを走る?

アリス:私は c) のワーグナーを聞きながらハーフマラソンを走るにするわ。運動と音楽のおかげでアイデアの泉が再び湧くかもしれないから。

ニール:じゃあ、君が正解だったかどうかの確認は番組の後ほどで。まず先に、アリス、君は'writer's block'という言葉の由来は知ってるかな?

アリス:そうね、この言葉が作られた、あるいは発明されたのは1950年、ウィーンの精神分析学者エドモンド・バーグラーによります。ここで、ローハンプトン大学で英文学の教授をしているザカリー・リーダーが作家の創作の行き詰まりについて精神分析理論を話しているのを聞きましょう。

[挿入]
Zachary Leader 英文学教授 ローハンプトン大学
作家がブロックされると言う言葉ができる前は、異なる隠喩が用いられてきました。それは例えば「枯渇する」とか…「凍りつく」とか「マンネリ化する」などです。ブロックされると枯渇するとの違いは、ブロックの場合は問題が外部化され客観化されていることです。問題はあなた自身ではないのです。原因はあなたの外にある障害物や妨害のようなものです。それは実際にあなたの力で切り捨てられるものであり、結果として腫瘍や異物を取り除くように回復するのです。

ニール:つまり作家が創作に行き詰まるとは障害物の暗喩という事だ。あなたの中にある内面的なものと言うよりむしろ外部にある。それがあなたの仕事を阻んでいると。どうもこれは何もしない言い訳のように聞こえないかい、アリス? 悪いのは僕じゃない。邪魔になるものが行く手を阻んでいるんだよ、って。

アリス:フフそうね。ちなみに'impediment'は障害物の同義語です。しかしどうやって、実際にそこにあるわけではない異物を切り取ることができるのかしら?

ニール:おそらく精神分析学者がその答えを持っているんじゃないかな。でも真面目な話、作家はきっと困難な状況にいると思うよ。君は毎朝9時に自分の席について書類を書くけれど、それは自分が言うべきことをそれから考えるという意味じゃない。もっとも、僕らが言葉に詰まるなんてことは全くないけれど、そうじゃない?

アリス:あまりないわね、ニール、ないわ。でも、この話は知ってる? 古代ギリシャ語にはミューズが、あるいは創造の女神がいて、人々を助けてくれるって。

ニール:つまり…、ビヨンセってこの世の女神じゃない? 人々がこんなふうに言うのを聞いたよ、えー、「ビヨンセは僕の女神だ。彼女は素晴らしい歌手でソングライターでダンサー。僕らの憧れだ!」って。

アリス:まあ最近は、「ミューズ」は芸術家や作家や音楽家を刺激する人なら誰でもそう呼ぶことができます。でも古代ギリシャでは9人のミューズがいて、あなたが何を創造するのか、哲学か詩か科学かなどによって決まっていました。そして特定のミューズに、あなたに霊感を与えてもらえるよう祈願した、あるいはそれを求めたのです。

ニール:僕は君にお願いするよ、ああアリス、ギリシャのミューズについてもっと我らに知識を与えてくださいって。

アリス:ええ、わかりました。では代わりにアンジー・ホッブスの話を聞きましょう。彼女はここイギリスのシェフィールド大学で、哲学に対する国民の理解の教授です。今ここで教授は、ギリシャのミューズが何を象徴しているのかを話しています。

[挿入]
Angie Hobbs 哲学に対する国民の理解 教授 シェフィールド大学 
私たちが見てきたところでは、ミューズは流水や泉、噴水、といった流れるものに結びついています。あなたが物思いにふけっている時、あなたは心をさまよわせており、あなたは新たな感化や新しい着想に心を開いています。そして、あまり体系的に考えすぎていません。

ニール:物思い、心をさまよわす、流れの中で考える、体系的すぎない。どれもとても心地よく響くね。僕ももう一度創作に挑戦する方がいいかも。

アリス:実は、研究によれば一部の人は心をさまよわせて新しい着想に心を開いている方がそうでない時より良いそうです。心が異なった働きをする。脳の視床という領域でドーパミンが増加するのです。

ニール:視床は意識と睡眠と五感を制御しています。そして、ドーパミンとは脳内にある気分を良くする化学物質。で、あってるよね?

アリス:ええ。そして視床のドーパミンが増加すると、人によっては世界を違ったように理解することが可能になり、その独創性を、科学や音楽や美術を通して表現します。さてニール、あなたが自分の脳にどれくらいドーパミンがあるのか黙想し始める前に、今日のクイズ質問の正解を教えてもらえるかしら?

ニール:僕の質問は、「ダ・ヴィンチ・コード」の作者ダン・ブラウンはどういう方法でスランプ解消を図ったでしょう? それは…

a) グラビティブーツを使って、天上から逆さ吊りでぶら下がる?
b) 寝室が六つある自宅を、隅から隅まで歯ブラシで掃除する?
それとも c) リヒャルト・ワーグナーの歌劇を聞きながらハーフマラソンを走る?

アリス:で、私は c) のリヒャルト・ワーグナーの歌劇を聞きながらハーフマラソンを走るにしたわ。

ニール:そして君は不正解だよアリス! 正解は a) のグラビティブーツを使って、天上から逆さ吊りになる、でした。

アリス:ホントなの?

ニール:そうなんだ。脳の血流が増えるだけで作家のスランプが消え去るのに役立つことを僕も期待するよ。

アリス:そうね、いい計画だわ。さあ、今日習った単語は以下の通りです。
creative juices
writer's block
coined
impediment
Muses
invoked
thalamus
dopamine

ニール:ではアリス、汝を夏の日に喩えようか? そなたの方がずっと美しく…

アリス:あなたの詩じゃないでしょ、ニール。それはシェークスピアよ! やれやれ、これで今日の6 Minute Englishはおしまい。

ニール:はい。僕は帰ってソファに寝転がって僕の女神を呼び出すことにするよ。またすぐ番組に参加してね!

二人:さよなら!

[ノート]
creative:創造力がある・創造性にとんだ
process:過程・行程・作業・進行
discuss話し合う・議論する

poetry:詩
have got:所有する・経験する・病気にかかる
sheaf:束・麦束
from someone's youth:若い頃から
bundle:束・塊・一まとめ・包み
particularly:かなり・非常に・とりわけ・個別に
creative juices:創造力・アイデアの泉
dry up:干上がる・枯れる・尽きる
What a shame:それは残念・せっかくなのに
like to:~したい・~するのが好き
flow of ideas:アイデアが浮かぶ・アイデアが出る
subject:主題・題目・テーマ
creativity:創造力・独創性
writer's block:作家が突き当たる壁・創作の行き詰まり・本が書けなくなること・スランプ
psychological:心の・精神的な・心理学の・気のせい
tennis elbow:テニス肘
golfer:ゴルファー・ゴルフをする人
knee:膝・膝関節
refer to:言及する・参照する・指す・問い合わせる
whilst=while:(ここでは)~なのに・しかし一方
view:(ここでは)考える・評価する・見なす
nonsense:無意味な事・ばかげた事・不愉快な事・つまらない事・でたらめ・たわ言
serious:真面目な・本気で・相当な・重大な
condition:様子・状態・健康状態・事情・疾患
get better:良い方に向かう
treatment:治療・手当て・待遇・処置
author:作家・著者
Da Vinci Code:『ダ・ヴィンチ・コード』は、2003年、アメリカ合衆国において、出版されたダン・ブラウン著作の長編推理小説である。『天使と悪魔』に次ぐ、「ロバート・ラングドン」シリーズの第2作。2006年に映画化。(wikipediaより)
Dan Brown:ダン・ブラウン(1964年6月22日 - )は、アメリカ合衆国の小説家。ニューハンプシャー州出身。(wikipediaより)
deal with:取り組む・解決しようとする・対応する
hang upside down:逆さまに吊るす
ceiling:天井
gravity:重力・引力
boots:ブーツ・長靴
gravity boots:グラビティブーツ ↓こういうの
 TG048_02
clean:掃除する・きれにする
from top to bottom:上から下まで・あらゆるところを・徹底的に
toothbrush:歯ブラシ
half-marathon:ハーフマラソン・正式のマラソンの半分にあたる21.0975キロを走る
opera:歌劇・オペラ
Richard Wagner:ヴィルヘルム・リヒャルト・ワーグナー(Wilhelm Richard Wagner 発音例 、1813年5月22日 - 1883年2月13日)は、歌劇の作で知られる19世紀のドイツの作曲家、指揮者である。ロマン派歌劇の頂点であり、また「楽劇王」の別名で知られる。(wikipediaより)
Exercise:運動・練習・行使
flow:流れる・あふれる
find out:見いだす・発見する・解明する・謎を解く
whether:~かどうか
term:(ここでは)言葉・用語
come from:(ここでは)由来する
coin:貨幣を鋳造する・新たな言葉を作る
invent:発明する・考案する
Viennese:ウィーンの
psychoanalyst:精神分析学者・精神分析医
Edmund Bergler:(German:1899 - 1962) was an Austrian-born American psychoanalyst whose books covered such topics as childhood development, mid-life crises, loveless marriages, gambling, and self-defeating behaviors. He was the most important theorist of homosexuality in the 1950s.(英語版wikipediaより)
Zachary Leader:(born 1946) is a professor of English Literature at the University of Roehampton. (英語版wikipediaより)
Professor:教授
English Literature:英文学
Roehampton University:ローハンプトン大学は、イギリス、ロンドンの国立大学である。前身であったロンドン大学を経て、イギリス南西部のギルフォードに位置する名門サリー大学に属していたが、2004年に同大学から独立し、"Univesity of Surrey Roehampton"から"University of Roehampton"と正式に発表された。ローハンプトン大学としての歴史はまだ新しく、近代的な大学として認知されている一方で、 大学を構成する教育学専門であった4つのカレッジの歴史自体は古く、2016年には175周年を迎えた。(wikipediaより)
psychoanalytic theory:精神分析理論
block:塞ぐ・閉鎖する・阻む・妨害する・遮断する
metaphor:隠喩・暗喩・メタファー
things like:そういったこと・~のようなもの
dry up:干上がる・乾く・枯渇する・尽きる
freeze:凍る・動きを止める
stuck in a rut:マンネリ化する
stick:(ここでは)動けなくする・立ち往生する
rut:わだち・車輪の跡
and so forth:~など・その他
in the case of:~の場合は・~について言えば
blockage:妨害物・封鎖されている状態
externalise:外面化する・外部に置く・客観化する
objectify:客観的にする・具体化する・~とみなす
outside:~の外側で・外部に・~以外では
obstacle:障害物・邪魔
impediment:障害・妨害するもの
really:実際には・本当に・明らかに・全く
cut away:切り取る・切り払う・逃げ出す
as a consequence:結果として
consequence:結論・帰結・因果関係・重大さ
cure:治療・治癒・回復・解決策
growth:成長・発展・(ここでは)腫瘍
foreign body:異物
external:外部・外観・外にある
rather than:~よりはむしろ
internal:内部の・内面の・内在する
prevent:防ぐ・止める・阻む
sound like:~のように聞こえる
excuse:許す・言い訳をする・正当化する
fault:責任・誤り・過失・落ち度
get in the way:邪魔になる・障害になる
another word for:~と言い換えられる・同義語である
actually:実際に・本当に・実は
suppose:思う・推定する・想像する
seriously:真面目に・真剣に・重大に・本当のところ
probably:おそらく・きっと・高い確率で
hard time:難局・つらい時期・悪戦苦闘・不景気・難しい仕事・てこずる
Though:~ではあるが・~だけれど・もっとも~だけれど・たとえ~でも
stick for words:言葉に詰まる
Ancient Greek:古代ギリシャ語
Muse:智の女神・ミューズ もとは Aoede(詩歌)、Melete(思索)、Mneme(記憶)の3人の姉妹神の一人を指し、後には学問・芸術をつかさどる9人に
goddess:女神
Beyonce:ビヨンセ・ジゼル・ノウルズ、通称名ビヨンセ(Beyonce Giselle Knowles, 1981年9月4日 - )は、アメリカ合衆国テキサス州ヒューストン出身のシンガーソングライター、ダンサー、音楽プロデューサー、女優。第52回グラミー賞において6部門で受賞し、女性アーティストでは史上最多受賞の記録を持つ(wikipediaより)
real:実在する・現実の・夢ではない・本物の
songwriter:作詞家・作曲家
role model:手本となる人・模範
these days:この頃は
inspire:霊感を与える・ひらめきを与える・元気づける・刺激を与える
Ancient Greece:古代ギリシャ
depend on:~を頼る・~によって決まる・~次第である
philosophy:哲学
invoke:思い起こさせる・引き起こす・呼び覚ます・祈る・祈願する
call upon:訪問する・呼びかける・~に頼む・求める・招聘する
particular:特定の・個別の
enlighten:啓発する・教え導く・知らせる・説明する
information:知識・情報・資料
Angie Hobbs:Angela Hunter "Angie" Hobbs (born 12 June 1961) is a British philosopher and academic, who specialises in Ancient Greek philosophy and ethics. (英語版wikipediaより)
instead:代わりに
Public Understanding of:~に対する国民の理解・社会の関心
University of Sheffield:シェフィールド大学はイギリス・イングランドの中部地方に位置するサウス・ヨークシャー州シェフィールド市を拠点とする国立大学である。イギリスの大規模研究型大学24校で構成されるラッセル・グループ(Russell Group)の一員であり、赤レンガ大学群(Red brick universities)と呼ばれる事がある。(wikipediaより)
symbolize:象徴する・シンボルとなる
connect:つながる・結びつく・連想する
running water:流水
spring:春・泉
fountain:噴水・泉
fluidity:流動性・滑らかさ・変わりやすさ
musing:熟考する・物思いにふける・黙想する
let someone's mind wander:人の心をさまよわせる
open oneself up to:~を受け入れる・~に目を向ける・心を開く・打ち解ける・開放する
influence:影響・感化・作用・支配力・威光・感化力・神秘的な力
idea:考え・着想・意見・知識・アイデア
structured:体系的な・組織化された・構造化された
fluid:流体・液体
unstructured:組織化されていない・体系化されていない・非構造的な
pleasant:楽しい・愉快な・心地よい
have another go at:~において次の挑戦をする
according to:~によれば
research:研究・調査
work differently:異なった働き方をする・異なる作用をする
dopamine:ドーパミン
thalamus:視床
region:(ここでは)部位・領域
brain:脳
control:操作する・制御する・統制する
consciousness:意識・知覚・正気・心・思考
sense:感覚・五感・感じ・意識・勘・センス・正気・意味・意見
feel-good chemical:気分を良くする化学物質
enable:可能にする
see:見る・理解する・考える・見なす
express:述べる・言う・表す・表現する・伝える
creatively:独創的に・創造的に
Really:本当ですか?・まさか!
expect:予期する・期待する
all that:~に関すること全て・~だけで・~で事足りる
increased:増加した
blood flow:血流
helpful:役立つ・助けになる
clear:きれいになる・片付く・消え去る
compare:比較する・なぞらえる・例える
thee:(古い言葉で)汝・そなた
Thou:(古い言葉で)汝・そなた
art:(古い言葉で)be動詞の2人称単数現在形

ウィリアム・シェイクスピア作「ソネット第18番」の冒頭二行
Shall I compare thee to a summer's day?:君を夏の日にたとえようか。
Thou art more lovely and more temperate: いや、君の方がずっと美しく、おだやかだ。

I'm off:(文脈で)行ってきます・もう帰ります・お先に失礼します・休みです
lie on the sofa:ソファに横になる・寝転がる
evoke:呼び起こす・想起させる

突然、ニールがカラム化しかけて、驚く。